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第15話
メデオ
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それは25年前の話。
マーブルバイオ科学研究所に研修研究生としてやってきた大学3回生のメデオ青年は、研修研究生にもかかわらずその知識量とアイデア力が認められ、かねてから憧れだったマーブル博士と共に正式に研究員として仕事をする事となった。
数いる大学在学生である研修研究生の中からマーブル博士が直々に選ぶという事はとても稀な事であり、それだけ彼が群を抜いて優秀だったという事に他ならない。
そんなメデオ青年をマーブル博士はとても可愛がった。
そしてマーブル博士は研究に関する情報とありとあらゆる知識、技術など大学では絶対に学ぶことのできない情報を惜しげも無くメデオに叩き込んだ。
実直なメデオはまるでスポンジが水を吸収するかの様にそれを習得していった。
ある日の事、研究所に珍しい来客があった。
その人は政府の役人で、ある国家プロジェクトについての研究要請をマーブル博士に知らせるために来たという。
その国家プロジェクトこそが「HIP(Humanized Incept project)昆虫人化計画」。
時代はヒューマノイドAI(人工知能が搭載された人型ロボット)により人間の労働は劇的に変化していった。いわゆる3Kと呼ばれる本当はやりたくない仕事は全てロボットが請け負ってくれるのだ。
だが人類にとって良い事ばかりでない。
人が本当はやりたくない3Kの仕事はロボットが請け負う事になるという事は、逆を言えば、今まで3Kの仕事をしてきた人は職を失う事になるという事だ。
しかしながら、また新たな仕事も生まれ、自分に合った仕事を選択できるようにもなり、また好きな事で生きていく事が主流となる時代とも言える。
懸念されている事は他にある。
それは『AIロボットによる人類の支配』だ。
AIロボットは、人工知能により自ら学び、考えて答えを導き出すため、いずれ人間が考え付かないような答えを導き出す可能性が十分にあるからだ。またAIロボット独自の言語が生まれ、AIロボット同士で会話をし始めたという報告もある。
さらにはAIロボットの製造コストはとてつもなく高いため、人件費削減の為に導入するにしても一般企業には手軽に手が出せる代物ではない事も問題視されている。
そこで密かに立ち上げられたプロジェクトが『HIP (Humanized Incept project)昆虫人化計画』だった。
しかし、このような前代未聞のプロジェクトの依頼に対して、すんなり頭を縦に振るような学者、専門家、技術者はなかなか見つからず、政府は頭を抱えていた。
そんな中で白羽の矢が立ったのがバイオ科学研究の第一人者であるマーブル博士だった。
マーブル博士は昆虫の研究を自然の中でしたいという理由で人里離れた山奥に研究所をひっそりと構えて独自の研究を行っていた。
世間的には無名の昆虫博士だったが学者や専門家からは「変わり者だ」と言う者や「学者の鏡だ」と言う者など賛否両論ある、業界の中ではいわゆる異端な存在として有名だった。
そして政府の役人は、マーブル博士にプロジェクトの全容を説明した上で研究の協力を求めた。
政府にとってはマーブル博士はたった一人の頼み綱であり最後の砦だったため、懇願する熱量も今までとは明らかに違い、なんなら土下座までする覚悟で臨んでいた。
ダメで元々ではこのプロジェクト案が流れてしまう。なんとしてでもマーブル博士にプロジェクトへの参加を頼み込んだ。その結果。
「ああ、構いませんよ。わしで良ければやりましょう。」
マーブル博士はすんなり快諾した。
「あ、ありがとうございます‼︎良かった‼︎宜しくお願いします‼︎」
政府の役人はあっさり依頼を受けてくれた事に大変喜び、マーブル博士の右手を両手を使って握手した。
「もし研究に必要なモノがあれば政府の方で用意致しますので‼︎」
メデオは2人の話を一部始終を見ている
「そうですねぇ。それならAIロボットの助手が欲しいですなぁ。」
「分かりました!直ちに用意させます‼︎ちなみにAIロボットの性別タイプはどちらにしましょうか?」
「それは勿論!女の子が良いですなぁ。あははは!」
「分かりました!女性AIロボットの助手ですね。ではご用意出来次第またご連絡させて頂きます!それでは失礼致します!」
「いや~楽しみじゃなぁ。なぁメデオくん。」
「マーブル博士、なんだか面白い事になってますね!僕も楽しみです‼︎」
「そうじゃな。しかし政府も昆虫を人化させるなんて事、よく考えついたもんじゃ。」
「本当ですよねぇ。もしそれが実現したとしたら。」
「世の中が、世界が、良くも悪くも変わるじゃろうな。」
「良くも悪くも?」
「あぁ。じゃが、こればかりはわしも初めての事じゃからな。やってみんとわからんな。じゃからメデオくん、君の柔軟な若き頭脳で、わしの力になってくれ!」
「はい!勿論ですよ、マーブル博士‼︎」
「ありがとう!宜しく頼むよ。」
それからマーブル博士とメデオ青年の新たな研究生活が始まった。
マーブルバイオ科学研究所に研修研究生としてやってきた大学3回生のメデオ青年は、研修研究生にもかかわらずその知識量とアイデア力が認められ、かねてから憧れだったマーブル博士と共に正式に研究員として仕事をする事となった。
数いる大学在学生である研修研究生の中からマーブル博士が直々に選ぶという事はとても稀な事であり、それだけ彼が群を抜いて優秀だったという事に他ならない。
そんなメデオ青年をマーブル博士はとても可愛がった。
そしてマーブル博士は研究に関する情報とありとあらゆる知識、技術など大学では絶対に学ぶことのできない情報を惜しげも無くメデオに叩き込んだ。
実直なメデオはまるでスポンジが水を吸収するかの様にそれを習得していった。
ある日の事、研究所に珍しい来客があった。
その人は政府の役人で、ある国家プロジェクトについての研究要請をマーブル博士に知らせるために来たという。
その国家プロジェクトこそが「HIP(Humanized Incept project)昆虫人化計画」。
時代はヒューマノイドAI(人工知能が搭載された人型ロボット)により人間の労働は劇的に変化していった。いわゆる3Kと呼ばれる本当はやりたくない仕事は全てロボットが請け負ってくれるのだ。
だが人類にとって良い事ばかりでない。
人が本当はやりたくない3Kの仕事はロボットが請け負う事になるという事は、逆を言えば、今まで3Kの仕事をしてきた人は職を失う事になるという事だ。
しかしながら、また新たな仕事も生まれ、自分に合った仕事を選択できるようにもなり、また好きな事で生きていく事が主流となる時代とも言える。
懸念されている事は他にある。
それは『AIロボットによる人類の支配』だ。
AIロボットは、人工知能により自ら学び、考えて答えを導き出すため、いずれ人間が考え付かないような答えを導き出す可能性が十分にあるからだ。またAIロボット独自の言語が生まれ、AIロボット同士で会話をし始めたという報告もある。
さらにはAIロボットの製造コストはとてつもなく高いため、人件費削減の為に導入するにしても一般企業には手軽に手が出せる代物ではない事も問題視されている。
そこで密かに立ち上げられたプロジェクトが『HIP (Humanized Incept project)昆虫人化計画』だった。
しかし、このような前代未聞のプロジェクトの依頼に対して、すんなり頭を縦に振るような学者、専門家、技術者はなかなか見つからず、政府は頭を抱えていた。
そんな中で白羽の矢が立ったのがバイオ科学研究の第一人者であるマーブル博士だった。
マーブル博士は昆虫の研究を自然の中でしたいという理由で人里離れた山奥に研究所をひっそりと構えて独自の研究を行っていた。
世間的には無名の昆虫博士だったが学者や専門家からは「変わり者だ」と言う者や「学者の鏡だ」と言う者など賛否両論ある、業界の中ではいわゆる異端な存在として有名だった。
そして政府の役人は、マーブル博士にプロジェクトの全容を説明した上で研究の協力を求めた。
政府にとってはマーブル博士はたった一人の頼み綱であり最後の砦だったため、懇願する熱量も今までとは明らかに違い、なんなら土下座までする覚悟で臨んでいた。
ダメで元々ではこのプロジェクト案が流れてしまう。なんとしてでもマーブル博士にプロジェクトへの参加を頼み込んだ。その結果。
「ああ、構いませんよ。わしで良ければやりましょう。」
マーブル博士はすんなり快諾した。
「あ、ありがとうございます‼︎良かった‼︎宜しくお願いします‼︎」
政府の役人はあっさり依頼を受けてくれた事に大変喜び、マーブル博士の右手を両手を使って握手した。
「もし研究に必要なモノがあれば政府の方で用意致しますので‼︎」
メデオは2人の話を一部始終を見ている
「そうですねぇ。それならAIロボットの助手が欲しいですなぁ。」
「分かりました!直ちに用意させます‼︎ちなみにAIロボットの性別タイプはどちらにしましょうか?」
「それは勿論!女の子が良いですなぁ。あははは!」
「分かりました!女性AIロボットの助手ですね。ではご用意出来次第またご連絡させて頂きます!それでは失礼致します!」
「いや~楽しみじゃなぁ。なぁメデオくん。」
「マーブル博士、なんだか面白い事になってますね!僕も楽しみです‼︎」
「そうじゃな。しかし政府も昆虫を人化させるなんて事、よく考えついたもんじゃ。」
「本当ですよねぇ。もしそれが実現したとしたら。」
「世の中が、世界が、良くも悪くも変わるじゃろうな。」
「良くも悪くも?」
「あぁ。じゃが、こればかりはわしも初めての事じゃからな。やってみんとわからんな。じゃからメデオくん、君の柔軟な若き頭脳で、わしの力になってくれ!」
「はい!勿論ですよ、マーブル博士‼︎」
「ありがとう!宜しく頼むよ。」
それからマーブル博士とメデオ青年の新たな研究生活が始まった。
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