魔手 ~Magic Hands〜

マシュー

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第1話

プレゼント

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俺の名前は羽佐宮 勝利はさみやかつとし(20歳)。

今はとある美容室でアシスタントをしてる。

いわゆる見習い美容師というやつだ。

俺の実家で両親が美容室を営んでいる影響もあるが、俺自身髪型をいじるのが好きだった事もあり、美容専門学校を出た後、親のコネで今の美容室に入店する事ができた。

だから今は、一人前の美容師になるために奮闘中だ。




今日も閉店後いつものように、日付が変わる時間までレッスンをしていた。


「お疲れっす~!あぁ~疲れた~!帰ったらソッコー寝よ!」


店の時計を見ると12時を過ぎていた。

同僚のスタッフと明日の予定を少し話してから別れ、1人原付にまたがり、半ヘルを被り、キーをさして、セルでエンジンをかけようとしたその時だった。


コツン!と何かがヘルメットに当たった音がした。

一旦バイクから降りて、足元を見るとそこには、キレイに包装されサイズは手の平ほどで、厚みはなく、長方形をした箱が落ちていた。


「何だこれ?」と思ったが、これは明らかに誰かへの「プレゼント」だろう。


だがおかしい。

たしかに上から落ちて来たんだが、上には何もない。

周りには高層マンションやビルもない。

誰かが落としたにしては不自然だ。

不自然というか、そもそもなんでこんなものが上から落ちてくるんだ?

誰がが投げたとか?

でもこんな時間に周りには誰もいないし。

なんだか怖くなってきた。

パニックだ。


いや待て待て。

一旦落ち着くんだ俺。

今は、そんなことはどうでも良いんだ。

これが誰のもので、どこから落ちて来たのかということよりも、俺は今、この中身が何なのかを無性に知りたい衝動に駆られている。

誰のものなのかは分からないけど、取り敢えずこれを開けよう!

そう決めた俺はすでに「今すぐ開けたい」という熱い気持ちの自分とは裏腹に、冷静なもう1人の自分が「家に帰ってから開ける」という楽しみに切り替え、この箱を急いでバッグに詰め込み、原付のエンジンをかけ一目散に家路へと向かった。




一軒家の自宅へと到着し、冷静かつ迅速に2階にある自分の部屋へと駆け上がり、俺はバッグからあの箱を取り出した。


箱を手に取り、じっと見つめる。

何だか開けてはいけないま「パンドラの箱」を開ける様なそんなドキドキ感を味わいながらも、包装紙が破れない様に少しずつ丁寧に丁寧に開けていった。



無事包装紙を外し、中の箱が出てきた。

箱に何か文字が書いてある。

「Magic Hands」

マジックハンズ?

魔法の手ってことか?

さらに中身が気になり箱のフタを開けてみると、中には手袋が入っていた。

えっ!?何?これだけ?

なんだよ手袋って!

しかもゴム手袋みたいに薄いし!

仕事でカラーの時に使えそうだな。

サイズは「Free」と書いてある。

俺はMサイズ。

とりあえず試しに左手に着けてみる。

ん~、少し大きいか。Freeって書いてたけど、Lだなこりゃ。

と、手袋を外そうしたその時。


俺の手よりも大きかった手袋がみるみる縮んでいき、ピッチリと手のサイズに収まった。


Freeサイズってこういうことか。
すげ~なこの手袋!

なるほど、これぞ「MagicHands」というわけだな。

そう納得した俺は、引き続き手袋を外そうとしたのだが。

きつい、きつすぎて指が手首の手袋の隙間に入らない。

おかしい、手袋が手から外れない!


マジかよ!!

どうしてだよ!どうなってるんだよコレ!

普通のゴム手袋じゃ無かったのかよ~!

いくら外そうとしても手袋は手に密着してまったく外れない。

「何が魔法の手だよ~!こっちは猫の手を借りたいくらいなのに~!って使い方違うか!」

すると突然、手の平からニョキニョキ~っと猫の手が生えてきた。

「え~~!!マジかよ!本当に猫の手が出てきた~ー!おっ、ちょっと待てよ。」

実験だ!試してみよう。

俺は心の中で言ってみた。すると猫の手が消えていった。なるほど!そうか理解したぞ!

今、俺は心の中で「猫の手消えろ」って言ったら本当に消えた。

どうやらこの手袋は、出したいものを声に出して言っても、心の中で言っても、実際に言ったものを出すことが出来る魔法の手袋の様だ。

この手袋にはまだまだ秘められた力が備わっているかもしれない。


そして、どうやらこの手袋は今日から俺の身体の一部になってしまったみたいだ。何かこれから面白い事が起きそうで、正直ワクワクしている自分がいる。

夢なら覚めないでくれ・・・。


仕事で疲れていたのだろう。

そう思いながら、俺はそのままベッドに身体を預け、そのまま意識が遠くなっていった。










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