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プロローグ 全てを変える夜

1 高鳴る笑い声響く

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 液体でぐちゃぐちゃになったシーツに沈む2人。
 騎士団の宿舎の一室。酒に溺れた男女は一時の快楽に身を漂わせていた。
 零れ落ちる嬌声と甘やかな息遣い。そんな静やかに包まれた空気を破ったのは、事後に高鳴るシルファ・ドーリカの笑い声だった。

「ふふふっ、あははっ、やった!やったわ!私はこれで自由!ありがとう、アルディス。貴方のおかげで私は救われたわ。これでもう、面倒な身分とはおさらばできるわ……」
 シルファはシーツを掴んで口元を抑える。情事のことなど隣に置いて自らの計画に、1人感傷に浸り始めたのだ。元々2人は仲が良いとは言えない関係。彼がシルファに何か疑いをかけることだって可笑しくなかったのに、面倒に足を突っ込むことになるかもしれないのに、彼はシルファをこの一時のために部屋に引き込んだ。シルファは嬉しくて、安堵して、ときめいて、相手にアルディスを選んだことが正解だったと小躍りしたくなったのだ。

 それに対して、今の今まで酒の流れで縺れ込んだはずと思い込んでいたアルディスはいきなり笑いだしたシルファの様子に動揺を隠せない。
 アルディスはシルファの内情をなにも知らない。聞いてない、見てもいない。アルディスは時折ある、団の酒宴の折、同期であった彼女に願われたから一晩を共にしただけ。己が何かの策略で触れ合いを願われたなど全く気づかなかったのだ。それはアルディスが持つ何時もの疑り深さから考えられないほどのことであったが、それが事実であった。

「は、シルファ?それは何の話だ」

「うふふっ。私の計画に貴方は嵌められたのよ。これはなし崩しなんかじゃない、狙って作られた展開ってこと。本当にありがとう、アルディス。貴方のお陰よ」
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