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4-2 突然の謁見
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小さく落ちたような感覚がしてキラリと大理石で作られた部屋が視界に映る。足は石を叩かずふかふかな絨毯を踏みしめた。
キョロキョロと視線を彷徨わせると白い部屋にラズとフレドリッヒ様、ペトラ様にアリナさん、先程現れたマントを羽織ったドゥーと呼ばれた男性と帽子を被った女性だけがいる。
「おー、やっと着いた。やっぱ、転移魔法は早いな。ドゥランありがとう。助かった」
「そうですか。君たちはこんな後処理、早く終わりたいのでしょう。約束の時間に間に合うようで良かったですねぇ」
「ああ。早すぎて無理とか言われねぇといいけど」
ラズが後ろ頭をガシガシ掻きながら部屋を出ると外がなんだと騒がしくなる。声を聞くと現れたことを知らず、急いで王へ取り次ごうとしているらしい。
「父王は仕事の大抵を宰相へ渡す。他国からの謁見でもなければ、暇をしているはず。そして今日は何も無いはずだ」
「以前私がお伺いした時もすぐ面会出来ましたし大丈夫なはずですが、あの方は面倒な方ですし……」
ガシャガシャとうるさい音かすると甲冑に身を包んだ騎士が現れる。
「勇者御一行様、王が謁見の間へ連れてくるようにお言いになられています!どうぞこちらへ!」
「早いな。急いできて良かった」
私たちが歩きだすと無機質な部屋の外、ようやく周囲がみえてくる。信じられないほど白い壁に大きく華やかな花瓶、豪奢な枠に嵌められた緻密な絵画に輝かしい創世神話を描いた天井画。
ゾワゾワと身の丈に合わない場所に連れられたことを意識していく。怖い。なのに、ラズに掴まれ周囲からは気遣われもう外に出ることは叶わない。
最終的に止まったのは金で作られた重厚な扉。ギィと重苦しい音がして横に並び立つ者の中心に着飾った男女が見えてきた。
あれは王と王妃だ。
謁見のため皆が体制を変えた。私もそれにつられて見よう見まねで体を動かす。
「ほう。貴様が魔王を討伐した『勇者』か。此度の討伐ご苦労。ドゥランとヴィニーアから話は聞いているぞ」
「はっ」
「して、その者は?君たちの隊の者とは違うようだが」
王が明らかに私にむけ声をかけたのに気づく。体制が崩れない程度にビクリと肩を揺らすとラズが私を引き寄せた。
「エリナは私達の料理番です」
「なに?」
「彼女は調理によって魔力を食事に篭めることができ、それで内部魔力ひいては体力の増長を行い我らに寄与してくれた為招集に連れて参りました」
……え?思わず出かかった声を必死で隠す。どうして、なんで。ラズは何を言っているの。王に伝える程のそんな力が私にあったの?もし、これがほんとならラズはなんで私に言ってくれなかったの?
何時もなら流せる彼の伝えないという選択肢はこの重要な事実において許されると思えなかった。戸惑いを隠すために奥歯を噛み締める。
それを見ていた王は眉をくいと上げた。
「この国そのような能力を持つ者がいるなど聞いたこともないが、貴様はそれを隠していたのか?」
「国を守護する辺境にとって彼女の力はなくてはならないものです。それを今の困窮されていた状態でお伝えするのは国に混乱が起きるかと」
「……貴様、私を愚弄しているな」
「いえ。そんなことはありません。ですが、彼女は私の伴侶でして、それを外に出すというのに思うところがあり隠しておりました。この者を私自身、取られたら何をするか分かりませんし、この者がいなければ何もかもを壊してしまいそうで。自分が恐ろしくてそんなことできません」
「……まあ良い。報酬などは追って聞くことにしよう。今回の功績は認めている。もうこの面会は終わりだ。帰って良いぞ」
衝撃的な事実たちに私は周囲のことが音としか認識できない。私は何者なのだろう。それに、どさくさに紛れに言われた伴侶という単語も聞き馴染みのない単語でしかない。私、まだ告白されてもないし、この状況って?
「ありがたいお言葉、ありがとうございます。では失礼いたします」
私はゆるゆると体を上げてラズの後ろを着いて、彼と転送された時にいた部屋に戻った。
キョロキョロと視線を彷徨わせると白い部屋にラズとフレドリッヒ様、ペトラ様にアリナさん、先程現れたマントを羽織ったドゥーと呼ばれた男性と帽子を被った女性だけがいる。
「おー、やっと着いた。やっぱ、転移魔法は早いな。ドゥランありがとう。助かった」
「そうですか。君たちはこんな後処理、早く終わりたいのでしょう。約束の時間に間に合うようで良かったですねぇ」
「ああ。早すぎて無理とか言われねぇといいけど」
ラズが後ろ頭をガシガシ掻きながら部屋を出ると外がなんだと騒がしくなる。声を聞くと現れたことを知らず、急いで王へ取り次ごうとしているらしい。
「父王は仕事の大抵を宰相へ渡す。他国からの謁見でもなければ、暇をしているはず。そして今日は何も無いはずだ」
「以前私がお伺いした時もすぐ面会出来ましたし大丈夫なはずですが、あの方は面倒な方ですし……」
ガシャガシャとうるさい音かすると甲冑に身を包んだ騎士が現れる。
「勇者御一行様、王が謁見の間へ連れてくるようにお言いになられています!どうぞこちらへ!」
「早いな。急いできて良かった」
私たちが歩きだすと無機質な部屋の外、ようやく周囲がみえてくる。信じられないほど白い壁に大きく華やかな花瓶、豪奢な枠に嵌められた緻密な絵画に輝かしい創世神話を描いた天井画。
ゾワゾワと身の丈に合わない場所に連れられたことを意識していく。怖い。なのに、ラズに掴まれ周囲からは気遣われもう外に出ることは叶わない。
最終的に止まったのは金で作られた重厚な扉。ギィと重苦しい音がして横に並び立つ者の中心に着飾った男女が見えてきた。
あれは王と王妃だ。
謁見のため皆が体制を変えた。私もそれにつられて見よう見まねで体を動かす。
「ほう。貴様が魔王を討伐した『勇者』か。此度の討伐ご苦労。ドゥランとヴィニーアから話は聞いているぞ」
「はっ」
「して、その者は?君たちの隊の者とは違うようだが」
王が明らかに私にむけ声をかけたのに気づく。体制が崩れない程度にビクリと肩を揺らすとラズが私を引き寄せた。
「エリナは私達の料理番です」
「なに?」
「彼女は調理によって魔力を食事に篭めることができ、それで内部魔力ひいては体力の増長を行い我らに寄与してくれた為招集に連れて参りました」
……え?思わず出かかった声を必死で隠す。どうして、なんで。ラズは何を言っているの。王に伝える程のそんな力が私にあったの?もし、これがほんとならラズはなんで私に言ってくれなかったの?
何時もなら流せる彼の伝えないという選択肢はこの重要な事実において許されると思えなかった。戸惑いを隠すために奥歯を噛み締める。
それを見ていた王は眉をくいと上げた。
「この国そのような能力を持つ者がいるなど聞いたこともないが、貴様はそれを隠していたのか?」
「国を守護する辺境にとって彼女の力はなくてはならないものです。それを今の困窮されていた状態でお伝えするのは国に混乱が起きるかと」
「……貴様、私を愚弄しているな」
「いえ。そんなことはありません。ですが、彼女は私の伴侶でして、それを外に出すというのに思うところがあり隠しておりました。この者を私自身、取られたら何をするか分かりませんし、この者がいなければ何もかもを壊してしまいそうで。自分が恐ろしくてそんなことできません」
「……まあ良い。報酬などは追って聞くことにしよう。今回の功績は認めている。もうこの面会は終わりだ。帰って良いぞ」
衝撃的な事実たちに私は周囲のことが音としか認識できない。私は何者なのだろう。それに、どさくさに紛れに言われた伴侶という単語も聞き馴染みのない単語でしかない。私、まだ告白されてもないし、この状況って?
「ありがたいお言葉、ありがとうございます。では失礼いたします」
私はゆるゆると体を上げてラズの後ろを着いて、彼と転送された時にいた部屋に戻った。
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