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酒にめちゃくちゃ弱いらしい俺はいつも記憶がない

プロローグ

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「お前、俺がいなかったら、何も出来ないんじゃないのか?ほら、夜ご飯出来たぞ。ベル、早く食べよう」
「うん」

「もう、何回目の忘れ物だよ……手伝うのは今回だけだからな。騎士の仕事、いい感じなんだろ。大切なもの無くさないように気をつけろよ」
「うん」

「俺はお前のこと、好きじゃないし。……お前が俺に近づいてるだけだからな。そこんとこ分かってるよな?」
「うん」


「いつもありがとう。僕、エルンストのそういうところも好きだよ」
「……ふん。都合のいいことばっかり言いやがって」




「先輩!私、先輩のこと大好きです!」
「うん。ありがとう。俺もユーリはいい後輩だと思ってるよ」
「せ、先輩……ありがとうございます!」

「……は?」


 一人の男であるエルンスト・ウールは泣いていた。
 自らを律した者であるエルンスト・ウールは屈辱を覚えていた。
 自身に宿るのは悲しみなどでは無い。そんな温い感情持ってすらいない。
 俺は怒りに燃えていた。
 そう。俺は怒ってるはず。寂しさなんて……
 
 いや、無理だ。自分で自分を騙せない。
 立ちすくんでいた体が震えている。
 憎しみと捨てられる恐怖で視界が歪む。

「くそっ……ベルンハルト・ブラウンめ。俺のこと好きって言っておいて、他のやつに好きとか言われて素直に『うん』って言うなよ、くそっ!くそっ、俺がっ……俺が……どれだけ頑張ったと……」
 音を立てて拳を握りしめる。
 ギリギリと鳴る程の痛みが自分を自分たらしめていた。

 そして、見ていられなくなったエルンストは走り出した。自らの家に帰るためだ。手に持ったベルンハルトの弁当を抱え、足を止めるつもりなどなくした。自分の心に刻まれた傷はじくじくと痛み、救いなど、許しなどないのかと叫びたくなる気持ちを抑えた。

 やはりこんな俺が愛する人に好かれることなど不可能なのだ。

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