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知らなかった君へ、救われた僕は
ホットミルクが映し出した隠し事 ※
しおりを挟む「ねぇ、クロ、ホットミルク作ったけど……って、え?」
「ん、はぁ、は、あっ……」
ルーシアが夜も遅いのに明るい部屋へ控えめなノックをして扉を開けるとクロンウェルが物凄い勢いで紙に文字を書きなぐってた。
そして、なんともう片方の手元では右手をゆるゆると握りしめ自慰をしていたのだ。深夜まで続く仕事らしきなにかに休息をと思っただけなのだ。ノックしても反応がないから開けてみようと思っただけなのだ。
ルーシアには彼のこんな姿を見るつもりはなかった。なかったからこそ、ルーシアはクロンウェルの見たことがない姿を見て固まったのだとも言えた。
彼の口からは、いつもの真っ直ぐ実直な声では無い耽美な息が漏れ出ている。彼の骨ばった指は、カクカクと動く腰に合わせ彼を慰めていた。
普段なら潔癖とも言える彼の特異的な行動だ。辺境に住んでいた弱々しい男を救った高潔そうな男の痴態である。
ルーシアは口に溜まった唾液を飲み込んだ。
彼をじっと、上から下までを眺める。
俯いた顔の至近距離からガリガリと綴られていく文章に、慣れたような仕草で手早くぬちぬちと擦られている男根。困り眉になりながらも苦しそうに歪んだ口角。文字にギラギラとした瞳を向け、疎かにならないよう手元をぐちゃぐちゃと音を立てながら撫でている。
困り果てていた自身を拾い上げた男の倒錯的な姿だ。
無防備で、扇情的で、情けなくて、可愛らしくて、愛しい。
彼が1回自らの性を吐き出すまで瞬きも少なに眺めていた。
淫らな彼の姿にルーシアは自身の心に知らない感情が生まれているのに気づく。これは……
「ん、はぁ、はっ、」
ふと、乱れた息を整えるクロンウェルに現実に戻ったルーシアは自身の置かれた状況に気づいてしまった。そんな感情とか言ってられない。
まずい。このままでいるのは危険だ。彼が後ろを向かれた瞬間にバレてしまいかねない。まだ自分には気づいてない様なのだ。急いで逃げなくては。早くしなければルーシアがいたと分かってしまうだろう。だから、急いで!
息を整えジリジリ足を後ろに下げていく。
だが、ルーシアのそんな小さな抵抗も虚しく。ガタン、お盆の上でズレたカップが触れた音が家に響いた。
その不快音にルーシアもクロンウェルは全身を揺らす。
「っ!?ルー……」
その音に反応して、後ろを振り向いたクロンウェルが零れ落ちそうなほど見開かれた目でルーシアを見つめていた。呆けた彼は体を固めている。
「……クロ。ごめん」
ルーシアはその痛い程の視線を見ることが出来なくて、視線を外して床を眺めた。靴が床を叩く音がしてクロンウェルが近づいてくる。
「ルーは俺が、必死に隠してた秘密を見たんだな?」
ルーシアは目を強く閉じる。もうおしまいだ。僕は怒られてこの家に居られなくなる。クロとの日々もおしまいだ。明日からどうしたらいいのだろう。様々な情報が頭を駆け巡っていく。
「……これに懲りたらもうノックなしに扉を開けてはいけない。今後はノックして出てくるまで俺を待つことだ。今日はなにも見なかったことにしろ。おやすみ、ルー」
アソコを触っていなかった方の手で僕の髪をかき撫でた。そのままの腕で体を押し出したクロンウェルはまた部屋に閉じこもり始めた。
数分で起きた色々に、ルーシアは唖然とすることしか出来なかった。
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