ブラコンなので、攻略対象者なんてどうでもいいです!

凪ルナ

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第一章

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 「とうとう来ちゃった…」

 今日から通う高校の門の前で、思わずそう呟いた。

 「何言ってんの、美結。早く行くよ?」

 私の隣で辛辣にそう言っているのが、小学校中学校が同じで幼なじみ兼親友の里奈ちゃんだ。この毒舌は里奈ちゃんの通常運転。私が毒舌を吐かれることは少ないけど、私たちは幼なじみで親友なので、遠慮なしに言われることもままある。私はそんな里奈ちゃんにうんと頷いて、校舎に向かって歩き出した。
 おおとり学園高校。それが乙女ゲームの舞台となる高校の名前。門のところに刻まれた名前は、確かにそれだし、乙女ゲームの背景でも、この門はあったと思い出せる。

 そういえば、確か、乙女ゲームの始まりも、門の近くで転けたヒロインが、ヒーローである攻略対象者の一人に手を差し伸べられ──

 「きゃっ」

 え。

 「大丈夫か?」

 嘘でしょ。私の後ろでイベントが始まっている。

 さっきの小さな悲鳴はヒロインの転んだ声。その後聞こえたイケボは攻略対象者だ。

 (え、マジか。散々聞いたあの声優さんの声じゃん。は~マジか。え、マジしか言えないんだけど。ヒロインどんな感じか気になるな。乙女ゲームだとヒロインの顔分からなかったし)

 後ろ振り返りたい。少しなら、チラッとならいいよね?いいよね?
 よし。チラッと顔を少しだけ後ろにして、目線も後ろに。

 「は、はい。大丈夫です。ありがとうございます」

 手を借りて立ち上がったヒロインになるほどと頷く。
 おっと。この選択肢ですか。好感度変動はプラス1だったかな。二つ目の、『「すみません」って言って走って立ち去る』の方がプラス2じゃなかったっけ?あーでも、好感度調節で、この人以外のルートならその選択肢の方がいいのか。まあ、三つ目の、『手を借りずに立ち上がって、「別にあなたの手助けなんて必要なかったのに」と言う』は選ばないか。普通に好感度マイナス入るもんね。

 にしても、さすが攻略対象者、イケメンだね。
 ああいうことが、サラッとできるから攻略対象者だし、イケメンなんだよね。あ、もちろんお兄ちゃんも手を差し伸べて、立ち上がらせて、怪我の確認まで行うよ!よく私がされるから、お兄ちゃんの行動は簡単に予測がつく。

 距離が離れる前にもう一回チラリと見る。

 現実だと乙女ゲームの登場人物ってこういう感じなんだ。やっぱりお兄ちゃんは、攻略対象者にも負けず劣らず、むしろ目じゃないね!

 現実になるとどんな感じかわかったし、クラス確認した後は、教室行かないとだし、荷物置いたら、お兄ちゃん探しに行くかなあ。

 なんて、意識が完全にお兄ちゃんに行っていた私のチラッとした視線に攻略対象者が気づいていたなんて、そんなこと、私は気づいていなかった。

 「…見られてた?」








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