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第一章
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しおりを挟む「あ、やっと降りてきた。朝ご飯できてるよ」
「おう」
我が家では私が料理担当だ。お母さん?ダークマター製造機なので、無理。お父さん?キッチンまわりが大変なことになります。お兄ちゃんは出来ないことは無いけど、私がやった方が早い。という感じで、我が家のキッチンは私の城というわけだ。ちなみに、我が家の朝ご飯は私の気分によって、パンか米かは決まる。
「お兄ちゃん、食べ終わったらすぐに出るよね?」
「おう。時間が同じなら、美結も俺が送っていけたんだけどな」
「先生なんだし、そりゃ時間は違うでしょ」
ちょっと残念そうにそう言うお兄ちゃんは、今年教師になった新任の先生。だから、早めに行くに越したことはないんだよなあ。私は一年生で入学式に参加するだけなんだから、時間が違うのも当たり前だ。お兄ちゃんは自分が車で送っていきたかったみたいだけど。お父さんもお母さんも仕事だしね。
「美結」
お兄ちゃんに急に少し低い声で呼ばれ、不思議に思いながら、お兄ちゃんを真っ直ぐ見つめる。
「ん?なあに?」
「何かあったら俺に言えよ」
真剣な顔からでてきたその言葉にパチパチと瞬きをする。高校では、同じ中学という子がほとんどいない。だから、そう言っているのだろうか。心配、と思い切り顔に出ている。
(まったく、心配症だなあ)
「ふふっ。うん。ありがとう、お兄ちゃん。でもね、里奈ちゃんがいるから大丈夫だと思うなあ」
そう、小学校中学校が同じのいわゆる幼なじみ的な親友が同じ高校に通うのだ。そういう友人関係の心配はいらないと思う。
「美結。そういうことじゃない」
「え、じゃあ、何」
友達が出来るかの心配をされてると思ってた。
そう思ったことが顔に出てたのか。
「はあ。お前には恋人やら彼氏やらはまだ早いって話だ」
え、そっちの何かあったら?
お父さんよろしく、私に彼氏が出来たら見極めるつもりだったの?
「お兄ちゃん。それこそ杞憂だよ。私、まだ恋とかは別にいいかなあって思ってるし」
「だと、いいんだけどな」
高校生になったから恋、だなんて。別にそんな、急に変わるわけないし。高校は乙女ゲームの舞台だから、私は巻き込まれないようにしようと思ってたんだよなあ。攻略対象者には興味ないし、お兄ちゃんがいればそれでいいって思ってたから。
「それより、お兄ちゃん。遅刻するよ」
「げっ。…とにかく、何かあったら俺に言うこと!」
時計を見て顔を顰めたお兄ちゃんは、そう言い残して、「いってきます!」とバタバタと家を出て行った。その背中に、「いってらっしゃい!」と言ったけど、聞こえただろうか。
「恋、かあ…」
興味は、あるんだけどな。
でも、お兄ちゃん以上の人ができるビジョンが全く生まれない。
あ、そろそろ時間だ。準備しないと。
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