推しの幼なじみになったら、いつの間にか巻き込まれていた

凪ルナ

文字の大きさ
上 下
16 / 19
中学生編

12.私とサブキャラな年上男子 後半【Side】倖誠

しおりを挟む
俺は何度目の挑戦だろうか…こっそりとアスランとリオルの侍従部屋を借りながらパウンドケーキを作っていた。

「うん、上手く焼けた!」

火加減が難しくて何度も失敗をしながら数日間で焼き上げた3本のパウンドケーキは、ブランデーの入ったもの、ナッツの入ったもの、バナナの入ったものだ。

安心しながら型ごと取り出すと、冷ますために放置する。

「アスランもリオルもありがとう…やっと焼けたよ」

形も失敗せずに、後は冷めたら切ってから味見をして持っていこう。
美味しいと言ってくれたらいいのだけれど。
セラフィリーアは汚してしまったキッチンを片付けながら、楽しそうに笑った。



「アイヴィス様、今日こそは綺麗に焼けました」

15時の時計が鳴るのを確認してから、普段ハワードが用意するワゴンを押しながら執務室に入る。
ちょうど決裁が終わったのか、アイヴィスが手にしていた玉璽を箱に戻した所だった。

「お茶にしましょう?」

こうでもしなければアイヴィスは休息しないことを知っている。
人が足りないのだろうか…不思議に思いながらセラフィリーアはティーセットの準備をしていく。

「アイヴィス様、こちらにいらしてください。パウンドケーキですが、私が作りましたがあまり甘くない筈ですから」

既に切り分けて貰っているパウンドケーキをそれぞれ一欠ずつ皿に寄せてテーブルに置く。
なかなか立ち上がらないアイヴィスの腕にそっと触れて立ち上がらせるとソファーに座らせる。
その隣にちょこんとセラフィリーアも座ってアイヴィスを見上げた。

「アイヴィス様、あーん?」

パウンドケーキを一口大にすると、そっと差し出す。
アイヴィスはそれを口にするとゆっくり咀嚼してから嚥下した。

「美味しい…ですね」

「ふふ、甘さを抑えてブランデーをいれているものです。アイヴィス様の口に合うかと思って…」

「セラはもういたたきましたか?食べていないなら一緒にいただきましょう?」

手にしていたフォークをそっと取られ、アイヴィスがパウンドケーキを切り分けると、バナナのパウンドケーキを差し出された。

「ん、ありがとうございます」

モグモグとすると紅茶を口に入れる。
優しい甘さが口のなかにひろがった。

「アイヴィス様…」

優しい甘さを感じて欲しくて、チュッとその唇にキスをする。
ふわりとブランデーの香りがした。


しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

【完結】離縁など、とんでもない?じゃあこれ食べてみて。

BBやっこ
恋愛
サリー・シュチュワートは良縁にめぐまれ、結婚した。婚家でも温かく迎えられ、幸せな生活を送ると思えたが。 何のこれ?「旦那様からの指示です」「奥様からこのメニューをこなすように、と。」「大旦那様が苦言を」 何なの?文句が多すぎる!けど慣れ様としたのよ…。でも。

愛すべきマリア

志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。 学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。 家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。 早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。 頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。 その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。 体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。 しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。 他サイトでも掲載しています。 表紙は写真ACより転載しました。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?

rita
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、 飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、 気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、 まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、 推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、 思ってたらなぜか主人公を押し退け、 攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・ ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!

悪役令嬢に転生したので、人生楽しみます。

下菊みこと
恋愛
病弱だった主人公が健康な悪役令嬢に転生したお話。 小説家になろう様でも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

お母様が国王陛下に見染められて再婚することになったら、美麗だけど残念な義兄の王太子殿下に婚姻を迫られました!

奏音 美都
恋愛
 まだ夜の冷気が残る早朝、焼かれたパンを店に並べていると、いつもは慌ただしく動き回っている母さんが、私の後ろに立っていた。 「エリー、実は……国王陛下に見染められて、婚姻を交わすことになったんだけど、貴女も王宮に入ってくれるかしら?」  国王陛下に見染められて……って。国王陛下が母さんを好きになって、求婚したってこと!? え、で……私も王宮にって、王室の一員になれってこと!?  国王陛下に挨拶に伺うと、そこには美しい顔立ちの王太子殿下がいた。 「エリー、どうか僕と結婚してくれ! 君こそ、僕の妻に相応しい!」  え……私、貴方の妹になるんですけど?  どこから突っ込んでいいのか分かんない。

処理中です...