推しの幼なじみになったら、いつの間にか巻き込まれていた

凪ルナ

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中学生編

10.【Side】颯真 颯真の懸念

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景希との遭遇後、図書館に颯真と玲弥が迎えに来てからのお話。

────────

 僕たちが声をかけるまで、りあはしばらくぼーっとしていた。

 「りあ。帰ろ」
 「おー、りあこんな所にいたのか。とりあえず帰ろうぜ」
 「あっ、うん、そうだね。帰ろう」

 とりあえず、りあを正気に戻して、帰り道。

 「しかし、さっすが颯だよな。りあの居場所あたったし」

 なんでわかったんだ?と疑問を表情にのせている玲。

 あー、それは…。

 「まあ、そうだな…。この学園の図書館、蔵書数が多いので有名だし、りあならどんなのがあるか確認には来るだろうなって思ってたから」

 りあ、自分の知識欲に忠実だから。自分の興味のあるような本があるかの確認は絶対するだろう?

 「完全に、私の行動を予測されてるっ!!」

 りあは、衝撃受けたっていう表情してるけどさ?

 「いや、だって、りあ分かりやすいし」

 そんなっ!?って顔をしている璃空。ほら、本当に分かりやすい。
 僕とりあのやりとりに、耐えきれないといった様子の玲が噴出する。おい、玲、笑いすぎだ。


 りあと別れ、玲と共に僕の家にたどり着く。そして、僕の部屋で玲と膝を突き合わせる。


 まあ、そんなわけだから、そのりあが行った図書館で、何かあったんだろうなっていうのは、簡単に予想がつくわけだ。

 問題は僕たちがりあのところまで来た時、呆気に取られたような顔のままボーッとしていて、それでいて…。

 チッ。思わず顔を歪め、舌打ちをしてしまう。

 声をかけた時、取り繕ったような笑顔を浮かべ、僕たちに背を向けて歩き出したりあの耳は赤く染まっていた。

 りあは普段からわかりやすく表情を変える。でも、隠そうとしたら、とことん表情は動かないように上手に隠す。だけど、僕と玲だけが知っている。りあは照れた時、耳を真っ赤にするんだ。それだけは、りあは知らないから隠せない。

 「玲」

 「あー、やっぱり、あれか?」

 僕が名前を呼ぶと、ガシガシ後頭部を掻きながら面倒そうな表情を浮かべながら聞いてくる玲。

 「たぶん考えてることは同じだろ」

 小さく息をついて、そう答える。

 「「りあがまた人を誑し込んだ」」

 しかも、僕の勘からすると、今回は男。

 たぶん、今の僕は苦虫を噛み潰したような表情をしているだろう。

 「あーっ!! もう、本当にりあはもう…」

 玲は、自分で自分の頭をぐしゃぐしゃと掻き回しながら崩れ落ちた。

 「りあのそれは無自覚だから」

 暗に仕方ないというニュアンスを含めながらそう言うと、玲は「だからってさあ」と、理解はできるけど納得いかないといった表情を浮かべるが、それは僕も同じ。

 りあはかわいい。幼なじみの贔屓目を抜いて見ても、世間一般的に整った容姿に穏やかで優しい性格をしている。りあは、自分の魅力に無頓着で無自覚だ。どれだけ、自分に影響力があるか分かってない。だから、誰にでも、花の咲いたような綺麗な笑顔を見せる。
 でも、あの気の抜けたふにゃふにゃとした、相手を心から信頼していることが目に見てわかる笑顔、あれは僕のものだ。百歩譲って僕と玲のものだ。

 「あー…知ってるだろう?りあのファンクラブ。また、人数増えたんだと。だけどなあ…」
 「人数が増えて『目』も増えたのに?りあに気づかれないように、ファンクラブの規則に口は出したけど…。何のためのファンクラブだよ、いくら気づかれないことの方が重要だといっても」

 りあは親衛隊の存在しか知らないが、りあには非公認のファンクラブ『天使会』が存在している。親衛隊は『天使会』の存在をりあから隠すためにつくられ、親衛隊はりあと比較的仲の良い女子で構成されている。ちなみに『天使会』と名付けたのは、親衛隊と兼任している女子だ。そして、その『天使会』の基本原則は“りあに迷惑をかけないこと”に重きを置いている。そして、僕が口出しして出来た規則は、りあに無闇に近づかない、近づかせない、ということ。りあのことは誰かしらが見守っている。だから、りあの信奉者には、知らない誰かがりあに近づくのを阻止してもらっている。

 「なのに、なーんで、俺たちの知らない男が、りあに接触してんだか…」
 「問題はその男が僕たちの敵になるかどうか、だよな」

 「「まあ、りあを照れさせるようなことをしたって時点で、ほとんど敵」」

 「だよなあ」

 僕が言うこととわざと被らせた玲がニヤリと笑った。

 ほんと、つくづく思う。
 りあには少し、無自覚に人を誑すのを自重して欲しい。

 りあの魅力は、最初は僕だけが知っていた。小学生になってからは、知っているのは僕と玲だけでいいと、そう思っていた。今ではりあの魅力は多くの人に知られてしまった。本当は僕と玲だけが知っていればいいのに、そう思う。
 これ以上、僕のライバルが増えなければいいと、そう願うが、無理なんだろうなと、半ば確信にも似た諦めを感じていた。



─────────
作者です。
遅くなりました。すみません。


中学生になったそーくん視点でした。

だいぶ大人になったそーくんだけど、りあから離される心配がないとそう思っているからこその余裕から、こうなりました。
でも、執着と嫉妬は相変わらず。
そして、人を使うことを覚えました。
ハイスペックですからね、そーくん。

れーくんもりあへの執着はハンパないけど、表には出ないタイプです。それに、出会った時から、りあの近くにはそーくんがいたからね。割り切っている部分はあります。

りあが色んな人を惹き付けるのにモヤモヤしている二人でした。


そーくんとれーくんがわちゃわちゃしながら、りあについてモヤモヤしてるの、書くの超楽しかった。


読んでいただきありがとうございます。
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