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小学生編
7.私はヒロインに会うなんて聞いてない・後編
しおりを挟む驚いた私はそのまま後ろに倒れそうになったところを、そーくんとれーくんに支えられて、私がぶつかった女の子らしい悲鳴をあげた子はそのまま尻もちをついて倒れた。おいおい、そーくん、れーくん。どっちかは彼女を支えてあげれば良かったのに。2人とも手を貸さなそうだったので、私が手を差し伸べる。(いや、何してんねん。そーくんとれーくんは)と私以外の女子への態度が冷たい二人に対して、私の中のエセ関西人がツッコミを入れる。
「大丈夫?」
「あ、はい!大丈夫です。すみません、私、あまり前を見てなかったので…」
私が差し出した手に、自身の手を重ねて立ち上がった彼女が前方不注意を謝り、顔を上げる。うん?何かこの子、見たことあるような…。
「ううん。私こそ前見てなかったから、ごめんね。怪我はない?」
「え、あっ…。少し擦りむいたくらいなので、全然大丈夫です」
そう言って、笑顔を見せる彼女を見て、既視感の正体が分かった。
この子、ヒロインかっ!!!!
これが漫画だったら、私の背後にはピシャーンと雷が落ちていることだろう。
しかし、いきなり動きが止まると、そーくんとれーくんが変に思うだろう、と思い、普段通りを装う。いやー、それにしても、流石ヒロイン、笑顔が可愛いなー。この子が未来のそーくんの彼女さんかー。うんうん、そーくんに対する印象悪くしないようにしないとなぁ。でも、今のそーくんにそれは期待できないし。これは、幼なじみの私がどうにかしなきゃ!!
「擦りむいてるだけって、ダメだよ、それは。ちゃんと手当しないと」
ムッとして少し怒って見せて、未だ名前を知らないヒロインちゃんの手を引いて、近くにあったベンチに座らせる。尚、この間、そーくんとれーくんは全く喋っていない。ヒロインちゃんの連れと思しき女子に話しかけられていたものの、そーくんは無表情、れーくんは苦笑いで答えていない。
幸い、ヒロインちゃんが怪我しているのは、手のひらだけだった。猫ちゃん型のリュックに入れていた天然水の入ったペットボトルを取りだし、「ちょっと痛いかも。ごめんね」と声をかけて水を彼女の手にかける。染みたのか、彼女の顔が歪み、若干涙目ではあるが、泣いてはいない。流石ヒロイン、我慢強いねー。そして、絆創膏を取り出して、ぺいっと貼って、よしOK!
「はい、終了!」
「えっと…、ありがとうございます」
「ううん。私がぶつかっちゃって怪我させたんだし、これくらい、どうってことないよ。女の子なんだし、跡が残っちゃ大変だしね。ちょっとの傷でもちゃんと手当てしなきゃダメだよ?」
私が真面目な顔を作ると、「はい…」としゅんとした顔をするヒロインちゃん。
「って言っても、これは、いっつも私がそこの幼馴染み二人に言われていることなんだけどね」
あはは、と苦笑気味で言うと、ポカンとした顔のヒロインちゃん。うん?その驚いた顔は何なのかな?いやいや、意外と私の幼なじみは心配性なんだよ?まあ、それはいいとして。
「君は、自分のこと、大切にするんだよ?」
そう言って、悪戯っぽく笑ってみせると、手当の間、ずっと申し訳なさそうな顔をしていた彼女も笑ってくれた。うんうん、やっぱ女の子は笑顔じゃなきゃねー。
「終わったか?そろそろ行こう」
せっかちなそーくんが、不機嫌そうに声をかけてきた。もう、急かす男はモテないよ?いや、そーくんモテてたか…。でも、確かに思ったよりも時間を食ってしまった。
「はいはい、もうー、あんまり急かさないでよ。急かす男はモテないよ?」
「別に(好きなやつ以外に)モテなくていいし」
ぷいっ、と他所を向きながら、しかめっ面でそう言うそーくんに、「そうなの?まあ、そーくんは十分モテてるもんね?」と、返しながら立ち上がる。れーくんは、私たちの会話の何かの会話がツボに入ったのか、そーくんの隣で「ブフォ」と吹き出した後、ヒィヒィ言いながら爆笑している。
あ、と思って後ろのヒロインちゃんを振り返って声をかける。
「じゃあ、私たちはもう行くね?バイバイ」
ヒロインに声をかけたあと、こちらを見て待っててくれている二人の元に駆け寄って、ヒロインに背を向けて歩き出す。
いやー、それにしても、ヒロインに会うなんて思ってなかったなー、次に会うのは高校でかなー、と思っていたら、「あの…!」と後ろから声が掛かる。
何だろう?何か忘れていたっけ?と不思議に思いながら、もう一度振り返る。
「私、御園愛奈っていいます。名前、教えてください!」
「…え?…えっと、この二人の?」
顔を赤くさせたヒロインーー御園愛奈ちゃんに、両隣の二人を指さしながら聞くと、ブンブンと首を横に振られる。どうやら、私の名前を聞きたいらしい。まあ、どうせ高校生の頃には忘れているだろうし、いっか。
「え、私?私は、七海璃空。じゃあ…
ーーまたね」
また、忘れた頃に、ね。
この後、そーくんとれーくんとめちゃくちゃ遊んだ。
と、これが小学六年生の修学旅行での、まさかの出会い。
そして、これが、後後のフラグになるとは、普通!思わないだろう!!と、呑気にヒロインの愛奈ちゃん可愛かったなー、と思っていた小学生の私は、高校生の私がそう頭を抱えることになるとは、夢にも思わなかったのだった。
◇◆◇◆◇◆◇
うん、まさか、修学旅行先でヒロインと会うとは思わないよなあ。やっぱり、そーくんがいたからかな?
色々考えていたら、あっという間に、卒業式は終わった。
現在、告白を受けている、そーくんとれーくん待ちだ。
「璃空…」
「璃空ぁ…」
後ろから名前を呼ぶ声が聞こえ、振り返る。
「あ、そーくん、れーくん、おつか…れ…?」
振り返ると、そこにはぐったりとした様子のそーくんとれーくん。れーくんに至っては涙目だ。
その様子は、どこの修羅場くぐってきたの?と聞きたくなる程。ブレザーのボタンはもちろん、中のカッターシャツのボタンまでなくなっている。
いや、本当にどうしたの?
「何なんだよ、目が血走ってて怖いんだよ。肉食獣、鬼、修羅、悪魔、般若だよ。ドンキーコ〇グだよ」
「女子、怖い」
れーくんは、その時の女子を色々なものに例えだした。いや、れーくんよ、ドンキーコ〇グは違うと思うよ。れーくんは、そーくんが操作するドンキーコ〇グが普通だと思っているだろうけど、そーくんは物理特化でとにかく力技で押せ押せなバーサーカーなゴリラだから。違うから。ドンキーコ〇グが可哀想だから。そーくんは、一言片言で言っただけで、無表情のまま固まっている。
これはアカン。頭の中の大阪のおばちゃんが断言している。
「えっと、大丈夫?」
「なわけないだろ」
食い気味に反対された。
どうしよう、と思っていたけど、ブツブツ言ってたれーくんが、「あ」と、何かに気づき復活した。と思ったら、固まっていたそーくんに何かを囁いた。あ、そーくんも復活した。
「「璃空」」
「なぁに?」
ふわりと柔らかく微笑む二人に、さっきとの落差に若干の恐怖を感じながら返事をする。
「手、出して」
?、とクエスチョンマークを飛ばしまくり恐る恐る手を出す私に、「だいじょーぶ!別にカエルとか変なもの渡したりしないから!」とニコニコ笑顔なれーくん。
「はい、これ」
「ん」
二人が私の手のひらに落としたのは、ブレザーのボタン。
「え、これって…」
「第二ボタンだけど?」
サラリと答えるれーくんと、何の問題があるんだ?と言いたげな顔のそーくんに頬がひくりと引くつく。これ、私が持ってたら、ダメなやつじゃない?
「女子が第二ボタンを狙ってるのは知ってたし、誰か一人に渡すのもまずいだろうし、だったら璃空に渡すかー、って颯と話してたんだ」
「璃空なら他の奴らも文句言わないだろ」
いやいやいやいや、そこまで考えついていて、何で私なら大丈夫だろってなるの!?誰にも渡さずに持っててよ!?
「く、クーリングオフ!クーリングオフを要求しますっ!」
「「却下」」
「そんなぁ…」
これ、本当にそーくん達って私離れするのかな。してくれるのかな。私、傍観したいのになぁ。不安になる。思春期、もしくは反抗期よ、仕事して。せめて高校生になったら、ちゃんと『君ラブ』が始まればいいんだけど。大丈夫、だよね?
───────
作者です。
次こそは中学生になっていると思います。新キャラも出す予定。あ、なんか今ハードルあげた気がする。
ヒロインねぇ、作者的には百合にするつもりはないので、そこはご安心(?)を。
(少し)成長したそーくんは、他の人の前では無表情、でも、りあ、玲の前では、表情豊かです。ただ、他の人のことは虫けらを見る目で見ているので、その辺は成長なし?です。そーくん、成長して。
逆にれーくんは、笑顔で当たり障りない感じで接します。線を引いて一歩踏み出させない感じです。
なので、顔はそーくんの方が整ってはいるものの、れーくんの方が、っていう女子もいる、って感じです。
第二ボタンの件は、りあなら大丈夫だから、というより、むしろ、りあにしかやるつもりはないので、そーくんとれーくんは、(以下略)
ただし、女子も強いので、じゃあ、それ以外はもらうねって感じで、もみくちゃにされて奪われています。
りあの嫉妬されてる~云々は被害妄想です笑
ガチ勢はいるものの、りあちゃんいるしね~って感じで、告白してバッサリ振られて諦めています。
後、男子のからかいは、お察しの通り、そーくんとれーくんに、(以下略)
(短い)小6編補足としてはこんなんです。
にしても、なんか長くなったな…。補足が長いって?せやな。
え、修学旅行と卒業式を一緒にしたからって?せやな。
修学旅行だけだと書ける気がしなかったから、この辺で乙女ゲーヒロイン出してフラグ立ててー、なら、いっその事卒業式入れるかーってしてたら、いつの間にか…。
卒業式にしたのは、ただ単にもみくちゃにされるそーくんれーくんに「女子怖い」ってなって欲しかったのと、第二ボタン渡して欲しかっただけ。
読んでくださりありがとうございます。
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