推しの幼なじみになったら、いつの間にか巻き込まれていた

凪ルナ

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小学生編

6.私はヒロインに会うなんて聞いてない・前編

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 うーん、小学校6年間って意外と短いんだなあ。卒業式の校長先生の話を聞きながら、小学校の6年間に思いを馳せる。あっという間だった気がする。

 そーくんとれーくんの半ズボンの制服も見納めかあ。

 私の通っている小学校は私立で、富裕層の子息令嬢が通うことで有名だ。つまり、お嬢様おぼっちゃま学校である。『君ラブ』の正式名称に学園の王子様とつくことからも、そーくんがお金持ちなあたりはお察しという所でもある。『君ラブ』の舞台である学園ももれなく金持ち私立である。そして、私の通っている小学校は制服がある。女子は紺のブレザーにプリーツスカート、男子は同じ紺のブレザーに半ズボンというもので、お嬢様おぼっちゃま感がすごい。
 そーくんとれーくんはこの制服がとてつもなく似合っているのだ。そして、私は、それが見られなくなるのを、悲しんでいるのだ。


 と、まあ、それは置いておいて。
 小学校生活の中でも、印象深い出来事の一つは、修学旅行だ。


◇◆◇◆◇◆◇


 小学六年生の秋。小学校生活の一大イベント、修学旅行がやってきた。私は、当然のごとく、班はそーくんとれーくんと一緒だ。うーん、班は自由に組んでいいとなっていたけど、これでよかったのか…。

 小学校の高学年にもなると、そーくんとれーくんはちょっとおませな女子たちに大人気になった。まあ、分かるけどね!だって、そーくんもれーくんもかっこいいし!

 そう、子供の成長とは早いとは言うものの、幼なじみ兼推しという贔屓目抜きにしても、2人はとてもかっこよくなった。ぷくぷくほっぺの可愛い顔から、輪郭はシュッとしてきたし、身長も私より高くなった。まあ、私は背の順で前から数えた方が早いから、4年生くらいの時から少しずつ差は出来始めていたんだけど、(おかしいなー、私なかなか身長伸びないなー)と私からすれば遺憾の意である。とはいえ、まだまだあどけなさは抜けきれておらず、まだまだ可愛いところもある。声変わりはまだのようで、前世で散々聞いた声優さんの声ではなく、今は幼少期の回想で出てくる声を少し低くした感じだ。うーん、声変わりが終わると、あの大好きな声優さんの声になるんだよねー。楽しみだなー。

 まあ、そんなイケメンと言われる部類に入るそーくんとれーくんとずっと一緒、というのは、分かってはいたけど、十分妬みの対象になるだろう。聞いたことはないけど、女の子から陰口を叩かれていることもあるんじゃないかなー。でも、今の私は美少女。二人の隣にいても、遜色はない容姿を持つわけで、そんなことを言うのは、極一部、だと思いたい。それに、だな、この世界の女の子って可愛い子多いんだよね。その子たちに、「その髪飾り、可愛いね。よく似合ってる」って言ったり、係の仕事を手伝ったり、優しく接していたら、何故か、私の親衛隊?っていうのが出来上がっちゃって、むしろ、どっちと付き合うの!?と聞いてきて、どっちとも付き合ってないよー、と答えると、嬉嬉としてどっちと付き合うのか賭けを始める子もいるくらいだ。

 後、私とそーくんとれーくんの距離感が近いからか、男子にからかわれる、というのが、五年生の頃の悩みにあったんだけど、それが3ヶ月くらい経ったら、その男子たちは何も言ってこなくなった。何故だ。

 まあ、そんな訳で、男子3人、女子3人、という班を作るにあたって、そーくんとれーくんは私と同じ班なら後はどうでもいいみたいで、その辺にいる男子を1人引っ張ってきて、後は女子は私に決めて、と押し付けてきたのだ。当然、仲のいい友達にするよね。それが他にそーくんとれーくんと組みたかった女の子達に申し訳ないなー。というのが、これで良かったのか、思う理由なのだ。でも、何か言ってくる子はいない。むしろ、これが当然、といった空気なのだ。なら、いいのかな…。と、なると、これは、楽しむしかないよね!


 そんな訳で、一泊二日の修学旅行!なのです!

 と、張り切っていた、のだが…。

 修学旅行、小学生の修学旅行なんて、平和は大事だねー、ていう勉強した後、それ以外は基本遊びだ。平和学習で、れーくんがうつらうつらと眠そうなのを、真面目なそーくんがペシリと軽く背中を叩いていて、それにハッとなったれーくんがキョロキョロしてるのを見て、そーくんと笑いを堪えつつ和んで、その後、テーマパークで楽しむはずだった。

 楽しむはずのテーマパークで、まさか、ヒロインと会ってしまうとは思わない、よね?


◇◆◇◆◇◆◇


 テーマパーク内では自由行動だ。だから、私はれーくんとそーくんと3人で行動していた。
 私はお気に入りの猫ちゃん型のリュックを背負い、修学旅行故の制服、そーくんやれーくんも流行りのリュックに制服、という格好で3人並んで歩き回り、アトラクションを回っていた。

 パンフレットを見ながら、次はあれにしよう、などと話しながら歩いていた。まあ、つまり、周りが見えていなかった。


 「そーくん、れーくん、次、これ乗ろう!」

 「どれだ?」


 私が指さしているパンフレットをそーくんが覗き込んできた。必然的に私とそーくんの距離は近くなるのだが、そーくんは気にしていないようだ。そういうとこだぞ、そーくん。スンッと、私の表情が抜け落ちる。それに対して、れーくんは苦笑気味に笑う。もう、笑い事じゃないんだよ?分かってる?こういうところが男子達にからかわれる理由なんだよ?最近何も言って来ないけどさ。まあ、それは置いておいて。


 「これー」


 私が指さしたのは、絶叫系。しかも、足がぶら下がる系の足場がないやつだ。

 げっ、と嫌そうな顔をするそーくんにニヤニヤとする私とれーくん。普通の絶叫系はそーくんは普通に乗れる。しかし、そーくんは、空中ブランコなどの足場がないのが苦手なのだ。「安定感に欠ける」とはそーくん談だ。


 「ふふっ。別にいいんだよー?待ってても。私とれーくんで乗ってくるから」


 ただ、私とれーくんの2人で乗る、というのは、許せないようだ。それに対しても嫌そうな顔をしている。これは、私もれーくんも乗るのを諦めないとダメっぽいなー。何でそんなに嫌なのか。ああ、そうか、私がいないと、他の女子に捕まるからか。


 「あーもー、仕方ねぇなぁ、そうは。いいよ、颯も乗れるやつにしよう」


 私と同じことを思ったのか、れーくんがそう提案した。それに対して、あからさまにホッとした顔をするそーくん。

 そして、3人でどれに乗るかを話しながら、歩いている時だった。私が、左にいたそーくんの方に、顔を向けていた時。


 ドンッ

 誰かにぶつかった。

 「わっ」

 「きゃっ」

 「「璃空!」」








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