6 / 19
小学生編
6.私はヒロインに会うなんて聞いてない・前編
しおりを挟むうーん、小学校6年間って意外と短いんだなあ。卒業式の校長先生の話を聞きながら、小学校の6年間に思いを馳せる。あっという間だった気がする。
そーくんとれーくんの半ズボンの制服も見納めかあ。
私の通っている小学校は私立で、富裕層の子息令嬢が通うことで有名だ。つまり、お嬢様おぼっちゃま学校である。『君ラブ』の正式名称に学園の王子様とつくことからも、そーくんがお金持ちなあたりはお察しという所でもある。『君ラブ』の舞台である学園ももれなく金持ち私立である。そして、私の通っている小学校は制服がある。女子は紺のブレザーにプリーツスカート、男子は同じ紺のブレザーに半ズボンというもので、お嬢様おぼっちゃま感がすごい。
そーくんとれーくんはこの制服がとてつもなく似合っているのだ。そして、私は、それが見られなくなるのを、悲しんでいるのだ。
と、まあ、それは置いておいて。
小学校生活の中でも、印象深い出来事の一つは、修学旅行だ。
◇◆◇◆◇◆◇
小学六年生の秋。小学校生活の一大イベント、修学旅行がやってきた。私は、当然のごとく、班はそーくんとれーくんと一緒だ。うーん、班は自由に組んでいいとなっていたけど、これでよかったのか…。
小学校の高学年にもなると、そーくんとれーくんはちょっとおませな女子たちに大人気になった。まあ、分かるけどね!だって、そーくんもれーくんもかっこいいし!
そう、子供の成長とは早いとは言うものの、幼なじみ兼推しという贔屓目抜きにしても、2人はとてもかっこよくなった。ぷくぷくほっぺの可愛い顔から、輪郭はシュッとしてきたし、身長も私より高くなった。まあ、私は背の順で前から数えた方が早いから、4年生くらいの時から少しずつ差は出来始めていたんだけど、(おかしいなー、私なかなか身長伸びないなー)と私からすれば遺憾の意である。とはいえ、まだまだあどけなさは抜けきれておらず、まだまだ可愛いところもある。声変わりはまだのようで、前世で散々聞いた声優さんの声ではなく、今は幼少期の回想で出てくる声を少し低くした感じだ。うーん、声変わりが終わると、あの大好きな声優さんの声になるんだよねー。楽しみだなー。
まあ、そんなイケメンと言われる部類に入るそーくんとれーくんとずっと一緒、というのは、分かってはいたけど、十分妬みの対象になるだろう。聞いたことはないけど、女の子から陰口を叩かれていることもあるんじゃないかなー。でも、今の私は美少女。二人の隣にいても、遜色はない容姿を持つわけで、そんなことを言うのは、極一部、だと思いたい。それに、だな、この世界の女の子って可愛い子多いんだよね。その子たちに、「その髪飾り、可愛いね。よく似合ってる」って言ったり、係の仕事を手伝ったり、優しく接していたら、何故か、私の親衛隊?っていうのが出来上がっちゃって、むしろ、どっちと付き合うの!?と聞いてきて、どっちとも付き合ってないよー、と答えると、嬉嬉としてどっちと付き合うのか賭けを始める子もいるくらいだ。
後、私とそーくんとれーくんの距離感が近いからか、男子にからかわれる、というのが、五年生の頃の悩みにあったんだけど、それが3ヶ月くらい経ったら、その男子たちは何も言ってこなくなった。何故だ。
まあ、そんな訳で、男子3人、女子3人、という班を作るにあたって、そーくんとれーくんは私と同じ班なら後はどうでもいいみたいで、その辺にいる男子を1人引っ張ってきて、後は女子は私に決めて、と押し付けてきたのだ。当然、仲のいい友達にするよね。それが他にそーくんとれーくんと組みたかった女の子達に申し訳ないなー。というのが、これで良かったのか、思う理由なのだ。でも、何か言ってくる子はいない。むしろ、これが当然、といった空気なのだ。なら、いいのかな…。と、なると、これは、楽しむしかないよね!
そんな訳で、一泊二日の修学旅行!なのです!
と、張り切っていた、のだが…。
修学旅行、小学生の修学旅行なんて、平和は大事だねー、ていう勉強した後、それ以外は基本遊びだ。平和学習で、れーくんがうつらうつらと眠そうなのを、真面目なそーくんがペシリと軽く背中を叩いていて、それにハッとなったれーくんがキョロキョロしてるのを見て、そーくんと笑いを堪えつつ和んで、その後、テーマパークで楽しむはずだった。
楽しむはずのテーマパークで、まさか、ヒロインと会ってしまうとは思わない、よね?
◇◆◇◆◇◆◇
テーマパーク内では自由行動だ。だから、私はれーくんとそーくんと3人で行動していた。
私はお気に入りの猫ちゃん型のリュックを背負い、修学旅行故の制服、そーくんやれーくんも流行りのリュックに制服、という格好で3人並んで歩き回り、アトラクションを回っていた。
パンフレットを見ながら、次はあれにしよう、などと話しながら歩いていた。まあ、つまり、周りが見えていなかった。
「そーくん、れーくん、次、これ乗ろう!」
「どれだ?」
私が指さしているパンフレットをそーくんが覗き込んできた。必然的に私とそーくんの距離は近くなるのだが、そーくんは気にしていないようだ。そういうとこだぞ、そーくん。スンッと、私の表情が抜け落ちる。それに対して、れーくんは苦笑気味に笑う。もう、笑い事じゃないんだよ?分かってる?こういうところが男子達にからかわれる理由なんだよ?最近何も言って来ないけどさ。まあ、それは置いておいて。
「これー」
私が指さしたのは、絶叫系。しかも、足がぶら下がる系の足場がないやつだ。
げっ、と嫌そうな顔をするそーくんにニヤニヤとする私とれーくん。普通の絶叫系はそーくんは普通に乗れる。しかし、そーくんは、空中ブランコなどの足場がないのが苦手なのだ。「安定感に欠ける」とはそーくん談だ。
「ふふっ。別にいいんだよー?待ってても。私とれーくんで乗ってくるから」
ただ、私とれーくんの2人で乗る、というのは、許せないようだ。それに対しても嫌そうな顔をしている。これは、私もれーくんも乗るのを諦めないとダメっぽいなー。何でそんなに嫌なのか。ああ、そうか、私がいないと、他の女子に捕まるからか。
「あーもー、仕方ねぇなぁ、颯は。いいよ、颯も乗れるやつにしよう」
私と同じことを思ったのか、れーくんがそう提案した。それに対して、あからさまにホッとした顔をするそーくん。
そして、3人でどれに乗るかを話しながら、歩いている時だった。私が、左にいたそーくんの方に、顔を向けていた時。
ドンッ
誰かにぶつかった。
「わっ」
「きゃっ」
「「璃空!」」
11
お気に入りに追加
794
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

【完結】離縁など、とんでもない?じゃあこれ食べてみて。
BBやっこ
恋愛
サリー・シュチュワートは良縁にめぐまれ、結婚した。婚家でも温かく迎えられ、幸せな生活を送ると思えたが。
何のこれ?「旦那様からの指示です」「奥様からこのメニューをこなすように、と。」「大旦那様が苦言を」
何なの?文句が多すぎる!けど慣れ様としたのよ…。でも。

転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?
rita
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、
飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、
気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、
まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、
推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、
思ってたらなぜか主人公を押し退け、
攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・
ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!

お母様が国王陛下に見染められて再婚することになったら、美麗だけど残念な義兄の王太子殿下に婚姻を迫られました!
奏音 美都
恋愛
まだ夜の冷気が残る早朝、焼かれたパンを店に並べていると、いつもは慌ただしく動き回っている母さんが、私の後ろに立っていた。
「エリー、実は……国王陛下に見染められて、婚姻を交わすことになったんだけど、貴女も王宮に入ってくれるかしら?」
国王陛下に見染められて……って。国王陛下が母さんを好きになって、求婚したってこと!? え、で……私も王宮にって、王室の一員になれってこと!?
国王陛下に挨拶に伺うと、そこには美しい顔立ちの王太子殿下がいた。
「エリー、どうか僕と結婚してくれ! 君こそ、僕の妻に相応しい!」
え……私、貴方の妹になるんですけど?
どこから突っ込んでいいのか分かんない。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる