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小学生編
3.推しと推しを絡ませるのが目標です
しおりを挟む私の言葉に、「そうなんだな。でも、りあちゃんがあやまるひつようはないよ」と、言って笑ったショタ玲弥。可愛すぎか。そして、ナチュラルに名前呼び。うぅ、さすが小学生。そうだよね。小学生は名前呼びに羞恥心なんて感じないよね。これが普通だよね。でもね、お姉さんにとっては普通じゃないんだなぁ。お姉さん、君の将来が心配だよ。女の人に「私のことは遊びだったのね!?」って後ろからグサって刺されたりしない?大丈夫?
そう思いつつも、それを表に出さないようにしながら、日向玲弥に微笑む。
「ううん。それでも、そーくんがごめんね?」
「いいって!あ、そんなに気にするなら、そのかわり、りあちゃんがおれの友だちになって!」
なっ?いいだろ?ってニコニコしながら問いかけてくるショタ玲弥。うぅ。かわいい。あざとい。語彙が溶ける。推しにこんな風にお願いされて断れる人間が果たしているのだろうか。少なくとも私には無理だ。あざといそーくんのお願いにいつも陥落しているのは私です!
だから、言ってしまった
「うん、もちろんだよ!よろしくね、れいやくん!」
締まりのない笑顔を日向玲弥ことれいやくんに向ける。そんなだらしのない私の笑顔にも、素敵な笑顔を見せてくれるれいやくんは天使かな?神様かな?
そして、れいやくんにそーくんのことをお願いしようと口を開こうとしたところで、先生からタイムアップの声がかかった。授業を始めるとのことだ。空気が読めないのね、先生。まあ、仕方ないか、と諦めて、大人しく教科書とノートと筆記用具を取り出して広げる。
さて、ちょっと考え事をしよう。だって、小学二年生の授業だよ?前世の記憶持ちな私には退屈すぎるから、考え事していても問題ないのでちょうどいいのだ。まあ、普段は普通の小学生を演じているけどね。面倒事には巻き込まれたくないし。あ、でも、程々に優秀な子供を演じているので、テストとかはいつも満点だよ!
私の演技についてはさておき。
ふむ。転校生は予想通り、日向玲弥だった。日向玲弥と夏目颯真の幼馴染フラグが綺麗に立った状態な訳だ。だが、しかし、そんなフラグを素手でへし折るだけでなく、粉々に粉砕して、ご丁寧に火に焚べて灰にするような勢いでそーくんれいやくん仲良しフラグをなかったことにするのが、今のそーくんだ。
今だって、れいやくんはまだ教科書が届いてないから、お隣と机をくっつけて、教科書を見せてもらわなきゃいけないのに、そーくんは知らんぷりをしていて、れいやくんはどうしよう、と困り顔だ。れいやくんのそんな困り顔も可愛いけどね!
仕方ないなぁ、と私はふぅとため息を吐き、「そーくん。れいやくんに、きょうかしょ見せてあげなきゃ。ほら、つくえくっつけて」とそーくんに促すと、そーくんは渋々といった表情で机をくっつけて、くっつけた机の真ん中に教科書を置いた。
ちょっと思考を戻そう。
つまり、今のそーくんでは、れいやくんと幼馴染にはならず、それどころではなく、そんなに仲良くならず、二人が絡むことも無いかもしれない。え、それはいやだ。私は、『君ラブ』みたいに二人が笑い合っている姿が見たい。親友が大事で、信頼しあっていて、そんな『夏目颯真』と『日向玲弥』に憧れて、だから『私』は彼らを好きになったんだ。だから、このまま、二人が不仲のままで許される訳がない。二人を仲良くさせたいというのは、これはあくまでも私のエゴだ。きっと、そーくんはそんなことを望んでいないだろう。でも、『夏目颯真』と『日向玲弥』は『幼馴染』で、『親友』でなければならない。それが、この世界の『設定』で、二人はそういう『キャラクター』でそういう『役割』をもっているから。もちろん、この世界は現実だ。物語やゲームの世界じゃない、今、私達が生きている世界だ。でないと、私の存在に説明がつかない。とはいえ、二人の『設定』を変えるのは怖い。もちろん、私は二人が仲良くなれば嬉しいし、それを見るのが楽しみというのが、私が二人を仲良くさせたい理由の大半で、でも、多少なりとも、そう思う気持ちもあった。私はどうしたらいい?二人を仲良くさせたい。幼馴染にしたい。そうなったら嬉しいし、だから、そうする。私の自己満足でエゴだ。それでいい。そのためには、二人を仲良くさせるためには、どうすればいい?どうするのが正解なの?どうしたら……
そんな風に、考えていた私は、前の席で、そーくんがれいやくんを睨みつけていたことなんて気づかなかったんだ。そして、この時、そのことを知っていたら、もしかしたら、違う未来があったかもしれないと思う。
◇◆◇◆◇◆◇
授業中考えた結果。正解らしい答えなんて思いつかなかった、が、とりあえず、私はれいやくんと仲良くなろうと思う。だって、私はそーくんの幼馴染で、そーくんは私のそばを離れない。だったら、私がれいやくんと仲良くなれば、自ずとそーくんとれいやくんは一緒にいることが増えるんじゃないかと思ったのだ。やだ、私ってば天才かもしれない。脳内でてへぺろをしながら星をパチンと飛ばす。あ、ごめんごめん、嘘だから!だから、変な目で見ないで!!
と、いうわけで、
「れいやくん!おうち、どこ?いっしょに帰ろ!」
ランドセルを背負って、ニコニコしながられいやくんを誘ってみた。あ、そーくんは私の隣で私と手を繋いでいる。可愛いなあ。そーくん、まだまだ、私には甘えてくるんだよ。だめ?なんて言って、首をこてんってさせてこっちを伺いながら見てくるんだよ?勝てないよね?今日も私の推しが可愛いです!ただ、今は、無表情で凍てつくような目でれいやくんを見ている。そーくん、そんな顔したらめっ!だよ?
「いいのか?」
ほらー。れいやくんも遠慮がちにそう言ってるよ。絶対そーくん見て言ったんだよ。
「うん、もちろん!ねっ、そーくん?」
「…」
またしても、渋々といった様子を微塵も隠す気はないようだが、頷いただけまだマシかな。「じゃあ、」と了承してくれた何気に家が近かったれいやくんと、不機嫌そうなそーくんと、三人で通学路を通っていく。もっぱら喋っているのは私だけで、そーくんは仏頂面のまま相槌を打つだけだ。そして、私が質問してれいやくんが答えて、という何とも微妙な空気のまま、いつも遊んでいる公園に着いた。
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