推しの幼なじみになったら、いつの間にか巻き込まれていた

凪ルナ

文字の大きさ
上 下
3 / 19
小学生編

3.推しと推しを絡ませるのが目標です

しおりを挟む



 私の言葉に、「そうなんだな。でも、りあちゃんがあやまるひつようはないよ」と、言って笑ったショタ玲弥。可愛すぎか。そして、ナチュラルに名前呼び。うぅ、さすが小学生。そうだよね。小学生は名前呼びに羞恥心なんて感じないよね。これが普通だよね。でもね、お姉さんにとっては普通じゃないんだなぁ。お姉さん、君の将来が心配だよ。女の人に「私のことは遊びだったのね!?」って後ろからグサって刺されたりしない?大丈夫?
 そう思いつつも、それを表に出さないようにしながら、日向玲弥に微笑む。


 「ううん。それでも、そーくんがごめんね?」

 「いいって!あ、そんなに気にするなら、そのかわり、りあちゃんがおれの友だちになって!」

 なっ?いいだろ?ってニコニコしながら問いかけてくるショタ玲弥。うぅ。かわいい。あざとい。語彙が溶ける。推しにこんな風にお願いされて断れる人間が果たしているのだろうか。少なくとも私には無理だ。あざといそーくんのお願いにいつも陥落しているのは私です!

 だから、言ってしまった


 「うん、もちろんだよ!よろしくね、れいやくん!」


 締まりのない笑顔を日向玲弥ことれいやくんに向ける。そんなだらしのない私の笑顔にも、素敵な笑顔を見せてくれるれいやくんは天使かな?神様かな?


 そして、れいやくんにそーくんのことをお願いしようと口を開こうとしたところで、先生からタイムアップの声がかかった。授業を始めるとのことだ。空気が読めないのね、先生。まあ、仕方ないか、と諦めて、大人しく教科書とノートと筆記用具を取り出して広げる。

 さて、ちょっと考え事をしよう。だって、小学二年生の授業だよ?前世の記憶持ちな私には退屈すぎるから、考え事していても問題ないのでちょうどいいのだ。まあ、普段は普通の小学生を演じているけどね。面倒事には巻き込まれたくないし。あ、でも、程々に優秀な子供を演じているので、テストとかはいつも満点だよ!

 私の演技についてはさておき。

 ふむ。転校生は予想通り、日向玲弥だった。日向玲弥と夏目颯真の幼馴染フラグが綺麗に立った状態な訳だ。だが、しかし、そんなフラグを素手でへし折るだけでなく、粉々に粉砕して、ご丁寧に火にべて灰にするような勢いでそーくんれいやくん仲良しフラグをなかったことにするのが、今のそーくんだ。
 今だって、れいやくんはまだ教科書が届いてないから、お隣と机をくっつけて、教科書を見せてもらわなきゃいけないのに、そーくんは知らんぷりをしていて、れいやくんはどうしよう、と困り顔だ。れいやくんのそんな困り顔も可愛いけどね!
 仕方ないなぁ、と私はふぅとため息を吐き、「そーくん。れいやくんに、きょうかしょ見せてあげなきゃ。ほら、つくえくっつけて」とそーくんに促すと、そーくんは渋々といった表情で机をくっつけて、くっつけた机の真ん中に教科書を置いた。

 ちょっと思考を戻そう。

 つまり、今のそーくんでは、れいやくんと幼馴染にはならず、それどころではなく、そんなに仲良くならず、二人が絡むことも無いかもしれない。え、それはいやだ。私は、『君ラブ』みたいに二人が笑い合っている姿が見たい。親友が大事で、信頼しあっていて、そんな『夏目颯真』と『日向玲弥』に憧れて、だから『私』は彼らを好きになったんだ。だから、このまま、二人が不仲のままで許される訳がない。二人を仲良くさせたいというのは、これはあくまでも私のエゴだ。きっと、そーくんはそんなことを望んでいないだろう。でも、『夏目颯真』と『日向玲弥』は『幼馴染』で、『親友』でなければならない。それが、この世界の『設定』で、二人はそういう『キャラクター』でそういう『役割』をもっているから。もちろん、この世界は現実だ。物語やゲームの世界じゃない、今、私達が生きている世界だ。でないと、私の存在に説明がつかない。とはいえ、二人の『設定』を変えるのは怖い。もちろん、私は二人が仲良くなれば嬉しいし、それを見るのが楽しみというのが、私が二人を仲良くさせたい理由の大半で、でも、多少なりとも、そう思う気持ちもあった。私はどうしたらいい?二人を仲良くさせたい。幼馴染にしたい。そうなったら嬉しいし、だから、そうする。私の自己満足でエゴだ。それでいい。そのためには、二人を仲良くさせるためには、どうすればいい?どうするのが正解なの?どうしたら……

 そんな風に、考えていた私は、前の席で、そーくんがれいやくんを睨みつけていたことなんて気づかなかったんだ。そして、この時、そのことを知っていたら、もしかしたら、違う未来があったかもしれないと思う。


◇◆◇◆◇◆◇


 授業中考えた結果。正解らしい答えなんて思いつかなかった、が、とりあえず、私はれいやくんと仲良くなろうと思う。だって、私はそーくんの幼馴染で、そーくんは私のそばを離れない。だったら、私がれいやくんと仲良くなれば、自ずとそーくんとれいやくんは一緒にいることが増えるんじゃないかと思ったのだ。やだ、私ってば天才かもしれない。脳内でてへぺろをしながら星をパチンと飛ばす。あ、ごめんごめん、嘘だから!だから、変な目で見ないで!!

 と、いうわけで、

 「れいやくん!おうち、どこ?いっしょに帰ろ!」

 ランドセルを背負って、ニコニコしながられいやくんを誘ってみた。あ、そーくんは私の隣で私と手を繋いでいる。可愛いなあ。そーくん、まだまだ、私には甘えてくるんだよ。だめ?なんて言って、首をこてんってさせてこっちを伺いながら見てくるんだよ?勝てないよね?今日も私の推しが可愛いです!ただ、今は、無表情で凍てつくような目でれいやくんを見ている。そーくん、そんな顔したらめっ!だよ?

 「いいのか?」

 ほらー。れいやくんも遠慮がちにそう言ってるよ。絶対そーくん見て言ったんだよ。

 「うん、もちろん!ねっ、そーくん?」

 「…」

 またしても、渋々といった様子を微塵も隠す気はないようだが、頷いただけまだマシかな。「じゃあ、」と了承してくれた何気に家が近かったれいやくんと、不機嫌そうなそーくんと、三人で通学路を通っていく。もっぱら喋っているのは私だけで、そーくんは仏頂面のまま相槌を打つだけだ。そして、私が質問してれいやくんが答えて、という何とも微妙な空気のまま、いつも遊んでいる公園に着いた。



しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

【完結】貴方の後悔など、聞きたくありません。

なか
恋愛
学園に特待生として入学したリディアであったが、平民である彼女は貴族家の者には目障りだった。 追い出すようなイジメを受けていた彼女を救ってくれたのはグレアルフという伯爵家の青年。 優しく、明るいグレアルフは屈託のない笑顔でリディアと接する。 誰にも明かさずに会う内に恋仲となった二人であったが、 リディアは知ってしまう、グレアルフの本性を……。 全てを知り、死を考えた彼女であったが、 とある出会いにより自分の価値を知った時、再び立ち上がる事を選択する。 後悔の言葉など全て無視する決意と共に、生きていく。

忙しい男

菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。 「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」 「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」 すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。 ※ハッピーエンドです かなりやきもきさせてしまうと思います。 どうか温かい目でみてやってくださいね。 ※本編完結しました(2019/07/15) スピンオフ &番外編 【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19) 改稿 (2020/01/01) 本編のみカクヨムさんでも公開しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】離縁など、とんでもない?じゃあこれ食べてみて。

BBやっこ
恋愛
サリー・シュチュワートは良縁にめぐまれ、結婚した。婚家でも温かく迎えられ、幸せな生活を送ると思えたが。 何のこれ?「旦那様からの指示です」「奥様からこのメニューをこなすように、と。」「大旦那様が苦言を」 何なの?文句が多すぎる!けど慣れ様としたのよ…。でも。

悪役令嬢に転生したので、人生楽しみます。

下菊みこと
恋愛
病弱だった主人公が健康な悪役令嬢に転生したお話。 小説家になろう様でも投稿しています。

それぞれのその後

京佳
恋愛
婚約者の裏切りから始まるそれぞれのその後のお話し。 ざまぁ ゆるゆる設定

転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?

rita
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、 飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、 気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、 まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、 推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、 思ってたらなぜか主人公を押し退け、 攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・ ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!

処理中です...