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女神の審判と婚約者
第六話 婚約者の真の制裁の始まり・上
しおりを挟むエディック殿下に出会ってからというもの、私はヴィンス兄様が皇宮に行く時には、「エディに会いに行くの!」と言って、必ずついて行くようになった。
エディック殿下との初めての出会い、あの時、私は迷子になっていたが、あの後、エディック殿下に連れられ、無事にヴィンス兄様と父様のところに行くことが出来た。迷子になったおかげで、エディック殿下と会うことが出来たと、当時の私は喜んだ。だが、ヴィンス兄様は皇宮にはエディック殿下に会いに行くのが目的だったので、迷子にならずとも、いずれは会うことが出来たはずだった。そのため、一時はそのことに沈んだが、アレキシス殿下よりエディック殿下に先に会えたことを喜ぶことにした。もし、アレキシス殿下と先に会っていたら、私とアレキシス殿下の婚約が、『サク君』の通りに結ばれていた可能性は高かっただろうと思ったからだ。だって、私とアレキシス殿下は同じ年だよ?普通は年齢が近い方と婚約させるよね。でも、先にエディック殿下に出会ったおかげで、私はエディック殿下に懐いてるんですよ~アピールが出来たからね。アレキシス殿下との婚約フラグは免れた。
しかし、ここから婚約者になるまでが、長かった。そして、婚約者になってからも、『サク君』で、ハイスペックなエディック殿下を差し置いて、というか、エディック殿下が皇太子の座を追われ、皇族のバカ皇子と呼ばれるアレキシス殿下が皇太子の座についた謎、というか七不思議、その要因を探り、突き止めた。いや、分かった時は、まさかこんなことがこの世にあるなんて、と我が目を疑ったことは記憶に新しい。そして、その要因が分かったと同時に、たぶんこの世界のエディック殿下は皇太子の座を脅かされることはないだろうと確信した。というか、私がそんなの許さないと決意した。
エディック殿下が再び陛下へ向き直り、この場が静けさに包まれた。
その『要因』については、今ここで語るべきことではないので、省いておこう。
「では、陛下。二つ目のお願いしたきことについてなんですが…」
エディック殿下はそう切り出し、周りの注目は再びエディック殿下に向く。
「うむ。まあ、予想はついておるが…。念の為言ってみよ」
エディック殿下が言ったことに対して、嫌な予感がひしひしする、と言わんばかりの引き攣った表情で返す陛下。
陛下にこんな表情させるなんて、エディック殿下って一体何を考えているんだろう…。
「私がお願いしたいのは、我が皇家に伝わる『女神の審判』をすること。そのことを許可していただきたい」
え?本気?エディック殿下。ヒロインの断罪にまさかの『女神の審判』ですか!?!?
エディック殿下がそう言った途端、辺りがざわついた。断罪される予定のヒロインはと言うと、「何それ?」と言わんばかりの表情で眉を寄せている。アレキシス殿下の顔からサーッと血の気がひいた。『女神の審判』、使われる本人じゃないのに。
「嘘だろ!?『女神の審判』?あれって伝説上のものじゃなかったのか?」
「私もそうだと思ってたんだが」
「あれって、実在するものなのか!?」
「あぁ、エディック殿下は正気か!?」
などと、言いたい放題である。おい、最後のエディック殿下の正気を疑ったやつ。エディック殿下はちゃんと正気だし、『女神の審判』は実在する。
『女神の審判』。これは、御伽噺の伝説として、知られており、実在するものとは思われていないのだ。証人として、女神を呼び出す、その能力は、皇家、それも血筋上、皇族の中でも、直系にしか出来ないこととされ、国の一大事などにしか使われない。そして、ここ数百年、『女神の審判』は使われていない。そんな用途さえ一般的には知られず、一部のみにしか、この『女神の審判』の詳細は知られていないのだから、皆の反応は当然のものであった。
ついでに言うと、私は皇家に輿入れするため、というのと、とある事情のため、教えて貰った数少ない一部の人間である。
「やはり、か…。だが、本気か?エディック。『女神の審判』をするというのであれば、我は止めぬ。しかし、その場合、何かあれば皇太子たるお前が責任をとらねばならぬぞ?」
真に迫る、そんな表情で、陛下は、自身の息子をその息子と同じ紫色の瞳で見つめ、息子であるエディック殿下もまた、陛下を同じ紫色の瞳で見つめ返した。
「ええ。覚悟は出来ております」
しっかりとした眼差しで、頑として陛下を見るエディック殿下に、陛下も根負けし、ため息を吐いて考え直すように説得は無理そうだと頷いた。
「お前がそこまで言うならな…。分かった、許可しよう」
「ありがとうございます。陛下」
陛下の許可に満足そうに、微笑み陛下に礼を言うエディック殿下。
彼はサラリとプラチナブロンドの髪を揺らして、ヒロインの方を振り返り、口を開いた。
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