私はあなたの婚約者ではないんです!

凪ルナ

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私の婚約者は

第一話 婚約破棄?

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 「アメリア・レンドール。貴様との婚約を破棄する!」


 ここは皇宮のホール。今日は学園の卒業パーティがそこで開かれていた。そこで響く澄んだ声は、明らかに怒りが込められている。この声の主は、第三皇子のアレキシス殿下。金髪碧眼の正統派王子風イケメンだが、皇族のバカ皇子で、取り柄と言えば顔くらいだと言われている。そして、アレキシス殿下の腕は1人の令嬢の腰にまわっている。その令嬢の名は、カレン・ナルメア。ナルメア男爵令嬢で、見た目は、金髪にルビーのような赤い瞳の、綺麗というよりは可愛い系の、theヒロインといった感じだ。

 (アレキシス殿下がまた何か始めたよ)

 きっと、この会場にいる人達はそう思っているんだろうなあ。

 あ、どうも。ただいま、バカ皇子こと、アレキシス殿下に婚約破棄されているアメリア・レンドールといいます。
 私には前世の記憶がある。前世を思い出したのは3歳の時。その記憶によると、私は悪役令嬢で、アレキシス殿下は攻略対象者、そして、カレン嬢がヒロイン、らしい。いやー、ぶっちゃけ、アレキシス殿下、前世の時から好みじゃないんだよね。それよりも、あんまりゲームでは出てこないアレキシス殿下の腹違いの兄、サブキャラな皇太子エディック殿下の方が好きだった。


 「貴様は私の愛するカレンを、身分が低いからと侮辱し、数々の嫌がらせをした!貴様を見る度にカレンは、怯えていた。今まではカレンの慈悲によって許していたが、もう我慢できない!貴様は私の妃に相応しくない。私は貴様との婚約を破棄し、私はカレンと婚約をする。」

 あぁ、アレキシス殿下、まだ何か言ってたのか。

 ん?カレン嬢と婚約するの?

 うーん。第三皇子とはいえ、皇族だし、男爵令嬢との結婚は難しいんじゃないかなぁ。
 この世界は、現実であって、ゲームじゃないんだから、身分差恋愛なんてするもんじゃないと思うよ?
 ねえ?前世持ちらしき脳内お花畑ヒロインのカレン嬢?まあ、私には関係ないんだけどね。

 ん?あぁ!父様が、物凄い般若な顔でこっちに向かおうとしている。それを陛下が必死になって止めようとしている。まあ、そうだよね。氷の宰相様がこんな茶番に割って入ってきたら茶番では済まないよね。ていうか、父様、顔が整っているだけに、怒った顔怖いんですが。私には普段デロデロ甘々なだけにその落差が怖い。心なしか、陛下に止められている分のイライラもあってか、周りにブリザードを放っている。

 あっ、アレキシス殿下死んだな。可哀想に。思わず、哀れみの目で見てしまいそうになる。

 あれ?ゲームではたしか、父様は私の事を見捨てていた気がするし、この辺りは違うなぁ。父様、母様大好きだし、母様にそっくりな私のことも好きだもんね。たしか、ゲームでは、母様とすれ違ってたんじゃなかったかなぁ。義理の弟ができた辺りで。

 と、思考がずれていったけど、とにかく、アレキシス殿下は好みじゃなくて、他に好きな人がいる私が、アレキシス殿下を攻略するカレン嬢の邪魔をする理由が見つからないのですが…。



 そう思いながら、ちらっとカレン嬢の方を見ると、わざとらしく、彼女は、きゃっ、とアレキシス殿下に抱きついた。それに対して、アレキシス殿下は心配そうな顔をして、カレン嬢の頭を撫でる。


 「そして、私の妃を侮辱し、嫌がらせをした罪により、貴様を国外追放にs」

 あ、これは止めないとシャレにならない。いや?私は大丈夫なんだけど、これを言い終わったら、アレキシス殿下の方がやばいからね?

 「お待ちください。1つ言わせてください」
 「?なんだ」
 「そもそも、私はあなたの婚約者ではないんです」


 そうそう。まずはこれだよね。間違えられたくないし。アレキシス殿下の婚約者とか、何それ無理。今のままだと絶対無理、というかフォロー面倒。それでなくても無理だわ。そのうち没落しそうかもだし。


 「何を言ってるんだ?」

 私がアレキシス殿下の婚約者だと疑いもしないアレキシス殿下。呆れた。どこからそんな根も葉もない話が…。あったな、そういえば、私がアレキシス殿下の婚約者だと、そのはずだと人が。
 カレン嬢か…。そんなことをバカに吹き込んだのは。


 「ですから、私はあなたの婚約者ではありません!私には婚約者は他にいます。ですから、カレン嬢に嫌がらせをする理由もありません」
 「はっ。そんなものは嘘だろう?」


 頑なに信じないアレキシス殿下に、私が半ば諦めかけていたその時。


 「嘘じゃないんだな、それが」


 その場の空気を変えてしまう、圧倒的な存在感を持つ声。その声の持ち主は、私が愛してやまないーー


 「兄上!」


 「エディック殿下…」



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