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「まさか・・・」
そう簡単に探れないはずだ
冷静さを残しながらも、物凄い回転で状況整理と打開案を模索するカイル
ロウビィは、カイルの微かな動揺を感じていた
「どうします?」カイルさん
俺がマきましょうか?準備は出来ています
ロウビィは笛を手にし、いつでも蜂に指令を出せるようにした
「いや、まて」
カイルの眼が光る
デバッグ能力を使って、状況を把握しているのだ
カイルがデバッグ能力を使うなんて珍しい
ロウビィは次なるカイルの指示を待った
こういうとき、下手に動くと致命傷を自らに与えかねないのだ
「ロウビィ、先に次のアジトに行っててくれ」そこに拠点を移す
「わかりました」
ロウビィは隠し通路がある本棚の間を抜けようとした
ゴードのアジトには無数の隠し通路があり、いろんな所へ繋がっている
カイルが作り出すそれらをすべて把握する事は不可能だが、
必要最低限の隠し通路は自然と覚えてしまうのだった
ロウビィがスイッチとなる本の仕掛けに手を伸ばしたとき、
カイルの隻眼が何かを捉える
「ロウビィ、待て」
「どうしました?」
「転移バグを使う」
「いいんですか?」
有能なデバッグ能力者であるカイルはバグを作り出すことも可能だが、
作り出したバグはデバッグをしなけれなならない
(そんな、ヤバイ状況なのか・・・?)
カイルさんに限って、有りえない
「もうすぐ、バグる」それを利用する
自然に生じたバグに手を加えて、バグを結合
別のバグに変えて利用した後、デバッグで治す
かなりのデバッグ能力がないとそんな事はできないが、
そのくらいこなしてしまうのが、カイルだった
「・・・わかりました」
「報告 西扉3突破されました!!」
「報告します 東扉5もう持ちません!!」
「南西扉 第2防御壁発動 援軍願います!!」
カイルの元に次々と状況が知らされる
盗賊団のアジトである以上、他者に攻め込まれる事も当然想定し
幾らかの防御策を施してあったのだが
それらが次々と破られていく
「カイルさん、デバッグはどうですの?」
「・・・あと少し」
カイルの周りを無数の光が飛び交い、クリスタルのような輝きを持つモノが
消えては現れ、現れては消え まさに幻想の世界で
このような状況でなければ、十分に見入ってしまう程だった
「悔しいですわ 私にもデバッグ能力があれば・・・」
「俺がここに存在するための義務だ 構わないさ」メリットの方が大きいし
アジトの最奥部にある部屋でデバッグ中のカイルを見守りながら、
ウィンはうまく壁に隠された武器庫からいろいろな種類のナイフを取り出す
「カイル様!! 最終防御地点にまで攻め込まれます!!」
エニマフォーツが扉を開け駆け込んでくる
四方に張り巡らした防御陣は、奥に行くと一本に終結される
つまり、その一本には分散されていた敵戦力が再び集合するのだ
最終防御地点が破られてしまえば、あとはこの部屋まで一本道といっても過言ではない
「連絡来ましたわ」
ナイフを出しつつ、ウィンは携帯をみる
「なんだ?」
「東アジトから、援軍が来るそうですわ」
「東・・・フェーレンか?」
刹那、エニマフォーツの脳が覚醒した
「あいつが・・・っ」いつもいいとこばかり取りやがって
エニマフォーツが拳銃を構える
何も考える間もなく、考える事もなく、
エニマフォーツは言葉を放つ
「俺が殿をする 皆の退避をっ!!」
「待ってください、エニマフォーツさん!!」
ウィンの言葉を欠片も受けず、エニマフォーツは飛び出して行った
「フェーレンさんが動くということは、また・・・」
「・・・わからない」
わからないが、やるしかない
もう敵はすぐそこまで攻め込んできている
「私も行ってますわ」
団員が退避する時間を稼いできますわ
「あぁ、頼む
俺もデバッグが済み次第、向う」
ウィンの眼が光る
そして、オーラに包まれる
光に反射して眩しいほどのナイフを周囲に浮かせながら
幼い女王は戦場に向かった
奥の見えない通路の先から、何人もの敵が押し寄せる
エニマフォーツの持つ魔銃は装填の必要はないため、
ゲームさながらの二丁拳銃で敵を迎え撃った
「なんだ、こいつら・・・」当たらねぇ・・・っ
早すぎる
最初に敵を捕らえた位置から、どのくらい下がったか
いくら敵を倒すことに夢中になっていたとはいえ、
ここまで下がってしまうと、認識せざるを得ない
くそ・・・っと苛立った瞬間、拳銃の下からの攻撃が右手に当たった
落ちた銃がたてるカラーンと乾いた音は聞こえるが、
それを気にする時間はない
至近距離からの連続蹴りに、エニマフォーツはよけるのが精いっぱいだった
一人に気をとられると、他の奴に横や背後をとられる
それはわかっているのだが、そこまでの余裕はなかった
(フェーレンに反応しちまったせいか・・・)
一瞬の後悔を敵は見逃していない
突然の炎にエニマフォーツはバランスを崩した
「おどきなさい!!」
エニマフォーツの頭上を銀色の物体が高速で通り過ぎる
ウィンが超能力でナイフを投げたのだ
その間隔はかなり狭く、よける事はほぼ不可能
ナイフの刺さった敵がはるか後方へ飛ばされるのが見えた
「ウィン様!!」
「加勢しますわ」
超能力を持つウィンは、武器を手に取る事はまずないが、
逆にそこにある物を超能力で動かすことができる
箒や万年筆でも高速で飛ばせば、立派な武器になるのだ
ウィンの周囲には幾つものナイフが飛び交っている
エニマフォーツの拳銃も彼の手に戻された
このまま押し返しますわ!!
ウィンがそう言おうとした瞬間、何かが来た
咄嗟にウィンがバリアを張るものの、寸の遅れで彼女のナイフが飛ばされる
前には少年
彼に手は空中に陣を描いていた
「ヴァルク流術師がお越しくださるとは」光栄ですわ
ウィンが低い声で挨拶をする「団員がお世話になったみたいですわね」
その眼は、とても幼女のものではなく
威圧を込めた睨みつけるような視線だった
少年からは一切の言葉も会釈もない
その代りに、彼の周りの小さな竜巻がその存在によって挨拶を交わした
そう簡単に探れないはずだ
冷静さを残しながらも、物凄い回転で状況整理と打開案を模索するカイル
ロウビィは、カイルの微かな動揺を感じていた
「どうします?」カイルさん
俺がマきましょうか?準備は出来ています
ロウビィは笛を手にし、いつでも蜂に指令を出せるようにした
「いや、まて」
カイルの眼が光る
デバッグ能力を使って、状況を把握しているのだ
カイルがデバッグ能力を使うなんて珍しい
ロウビィは次なるカイルの指示を待った
こういうとき、下手に動くと致命傷を自らに与えかねないのだ
「ロウビィ、先に次のアジトに行っててくれ」そこに拠点を移す
「わかりました」
ロウビィは隠し通路がある本棚の間を抜けようとした
ゴードのアジトには無数の隠し通路があり、いろんな所へ繋がっている
カイルが作り出すそれらをすべて把握する事は不可能だが、
必要最低限の隠し通路は自然と覚えてしまうのだった
ロウビィがスイッチとなる本の仕掛けに手を伸ばしたとき、
カイルの隻眼が何かを捉える
「ロウビィ、待て」
「どうしました?」
「転移バグを使う」
「いいんですか?」
有能なデバッグ能力者であるカイルはバグを作り出すことも可能だが、
作り出したバグはデバッグをしなけれなならない
(そんな、ヤバイ状況なのか・・・?)
カイルさんに限って、有りえない
「もうすぐ、バグる」それを利用する
自然に生じたバグに手を加えて、バグを結合
別のバグに変えて利用した後、デバッグで治す
かなりのデバッグ能力がないとそんな事はできないが、
そのくらいこなしてしまうのが、カイルだった
「・・・わかりました」
「報告 西扉3突破されました!!」
「報告します 東扉5もう持ちません!!」
「南西扉 第2防御壁発動 援軍願います!!」
カイルの元に次々と状況が知らされる
盗賊団のアジトである以上、他者に攻め込まれる事も当然想定し
幾らかの防御策を施してあったのだが
それらが次々と破られていく
「カイルさん、デバッグはどうですの?」
「・・・あと少し」
カイルの周りを無数の光が飛び交い、クリスタルのような輝きを持つモノが
消えては現れ、現れては消え まさに幻想の世界で
このような状況でなければ、十分に見入ってしまう程だった
「悔しいですわ 私にもデバッグ能力があれば・・・」
「俺がここに存在するための義務だ 構わないさ」メリットの方が大きいし
アジトの最奥部にある部屋でデバッグ中のカイルを見守りながら、
ウィンはうまく壁に隠された武器庫からいろいろな種類のナイフを取り出す
「カイル様!! 最終防御地点にまで攻め込まれます!!」
エニマフォーツが扉を開け駆け込んでくる
四方に張り巡らした防御陣は、奥に行くと一本に終結される
つまり、その一本には分散されていた敵戦力が再び集合するのだ
最終防御地点が破られてしまえば、あとはこの部屋まで一本道といっても過言ではない
「連絡来ましたわ」
ナイフを出しつつ、ウィンは携帯をみる
「なんだ?」
「東アジトから、援軍が来るそうですわ」
「東・・・フェーレンか?」
刹那、エニマフォーツの脳が覚醒した
「あいつが・・・っ」いつもいいとこばかり取りやがって
エニマフォーツが拳銃を構える
何も考える間もなく、考える事もなく、
エニマフォーツは言葉を放つ
「俺が殿をする 皆の退避をっ!!」
「待ってください、エニマフォーツさん!!」
ウィンの言葉を欠片も受けず、エニマフォーツは飛び出して行った
「フェーレンさんが動くということは、また・・・」
「・・・わからない」
わからないが、やるしかない
もう敵はすぐそこまで攻め込んできている
「私も行ってますわ」
団員が退避する時間を稼いできますわ
「あぁ、頼む
俺もデバッグが済み次第、向う」
ウィンの眼が光る
そして、オーラに包まれる
光に反射して眩しいほどのナイフを周囲に浮かせながら
幼い女王は戦場に向かった
奥の見えない通路の先から、何人もの敵が押し寄せる
エニマフォーツの持つ魔銃は装填の必要はないため、
ゲームさながらの二丁拳銃で敵を迎え撃った
「なんだ、こいつら・・・」当たらねぇ・・・っ
早すぎる
最初に敵を捕らえた位置から、どのくらい下がったか
いくら敵を倒すことに夢中になっていたとはいえ、
ここまで下がってしまうと、認識せざるを得ない
くそ・・・っと苛立った瞬間、拳銃の下からの攻撃が右手に当たった
落ちた銃がたてるカラーンと乾いた音は聞こえるが、
それを気にする時間はない
至近距離からの連続蹴りに、エニマフォーツはよけるのが精いっぱいだった
一人に気をとられると、他の奴に横や背後をとられる
それはわかっているのだが、そこまでの余裕はなかった
(フェーレンに反応しちまったせいか・・・)
一瞬の後悔を敵は見逃していない
突然の炎にエニマフォーツはバランスを崩した
「おどきなさい!!」
エニマフォーツの頭上を銀色の物体が高速で通り過ぎる
ウィンが超能力でナイフを投げたのだ
その間隔はかなり狭く、よける事はほぼ不可能
ナイフの刺さった敵がはるか後方へ飛ばされるのが見えた
「ウィン様!!」
「加勢しますわ」
超能力を持つウィンは、武器を手に取る事はまずないが、
逆にそこにある物を超能力で動かすことができる
箒や万年筆でも高速で飛ばせば、立派な武器になるのだ
ウィンの周囲には幾つものナイフが飛び交っている
エニマフォーツの拳銃も彼の手に戻された
このまま押し返しますわ!!
ウィンがそう言おうとした瞬間、何かが来た
咄嗟にウィンがバリアを張るものの、寸の遅れで彼女のナイフが飛ばされる
前には少年
彼に手は空中に陣を描いていた
「ヴァルク流術師がお越しくださるとは」光栄ですわ
ウィンが低い声で挨拶をする「団員がお世話になったみたいですわね」
その眼は、とても幼女のものではなく
威圧を込めた睨みつけるような視線だった
少年からは一切の言葉も会釈もない
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