【完結】 悪女は今日もパンを焼く 【R18】

４

「素晴らしい、何と落ち着いた浴衣なんだ」

スーパーで売ってる女子向けの浴衣とは、明らかに違う格式に驚いている。
ペラペラの生地に、プリントされた物とは違う。
織りから違うし、染めの技法も違うのだ。
価格だって、２０倍くらい差がある。
夏着物として、着ることだって出来る浴衣だった。

「衿を着けて足袋を履けば、夏着物として着こなせます」
母が説明した。

「お二人共、想像と違ったようです」

「勿論、可愛い色の物もありますよ」
そう言って、明るい色合いの浴衣を見せた。

「髪の色や瞳の色で合わせたかったので、いくつか持ってきました」
母は外国の人にも、教えた経験がある。
エヴァリンに学校祭で会っていたので、今着ている浴衣にしたと説明していた。

「お母様の心使いに、感謝しますと言っている」
彼が、ベイリー夫婦の言葉を伝える。
その後は、恒例の撮影会になった。

「ランチを予約している。
一緒に食事をしたいと、誘っている」
この後の予定は無いので、お受けする。

母がせっかくなので、エヴァリンにも訪問着を着てもらうと言い出した。
ランチの時間を、３０分遅らせて着付けに入った。
母の目の色が変わる。

食事をするので、帯を締めすぎると食べられない。
緩いと着崩れる。
締める所と、緩めるところを使い分ける。
帯を締めて、髪をアップにしたら髪飾りで留めた。

「リサイクル着物にしては、いい物だわ」
選んだ私に、合格をくれた。

「苦しくない、フィットしてる」
エヴァリンが言った。
私が着せた時とは、まだまだ差があるようだ。

「３人揃うと、圧巻だな」
イタリア野郎が、褒めてくれた。
ベイリー氏もご満悦の様子。
奥様をエスコートして、みんなでレストランに向かった。