【完結】 悪女は今日もパンを焼く 【R18】

６

「焼きたてのパンって、美味しいですね。
自分が作ったと思うと、余計に」

智貴ともう一人の男性が、ブラックコーヒー片手に出来上がったパンを食べていた。
私の作業台では、コーンマヨパンも作った。
間に巻き込む具材を替えるだけなので、手順に大差は無い。

「自分でこねた方が楽しいです」
女性の参加者も喜んでくれた。

参加者が帰って、私たちは実習室を片付ける。
ミーティングが終わって、私は先に帰った。

智貴と待ち合わせたカフェで、おしゃべりをする。

「楽しかった？」

「考えたら最近は、病院しか知らない。
カルチャーショックというか、別世界だった」

「それが狙いだった。面白かったでしょ」

「いい気分転換になった。
出来上がった時、嬉しかったよ」

「美味しそうに食べていたもんね」

「ちょうどお腹も空いていたので、２個とも食べたよ」

「本当は、私のと交換したかった」

「紗栄子の方が美味しいだろうけど、俺は満足してる」
違う、美味しさじゃないんだ。
智貴が初めて作ったパンが、食べたかった。

ちょっと不機嫌な顔をしたんだろう。
彼が夕食を誘ってくる。

「焼き肉が食べたい。
なかなか一人では行く気になれないから、付き合って」

銀座の一流店で、焼き肉を食べた。

部屋に戻って、その夜は愛しあった。
次の日、目が覚めてから、また愛しあう。
新婚時代でも、こんなにSEXしたことが無かった。

月曜日の夕方、羽田空港まで送っていく。

「夢のような４日間だった。俺の為に、ありがとう」

「私も離婚する前、苦しんだの。
貴方が別れてくれたから、助かった。
お礼というか、借りがあったのを返しただけ」

今日焼いたライ麦パンを２個渡して、搭乗ゲートで見送った。