【完結】 悪女は今日もパンを焼く 【R18】

独り立ち １

６月に入り、実習は落ち着いてきた。
合わせるように学校指定だった実習チームが、解禁された。
４人一組、誰と組んでもいい。

「お姉様、私と組んでくれますよね」
麻未が聞いてくる。

「私は、誰とも組まないわ」

「何でですか？」

「現場では、誰と一緒でも仕事をしないといけないの。
嫌いな人でも、仕事は仕事。
割り切って出来るのも、訓練だから」

最初の実習日、早く実習室に入って席に着く。
早速チームを作ってるものもいれば、その場で組む者もいる。

柚木武尊は、私の隣の作業台に座った。
私と一緒じゃないが、見える位置だ。
直ぐに武尊目当ての女子が、席を取っていた。

伊桜稜也と柊木麻未、立花妃奈は一緒の作業台だった。
私の作業台とは、向こう隣になる。

一人座っていたら、３人組の女子が入って来た。
「八神さん、ご一緒していいですか？」
柳田亜紀と仲間二人だった。

「どうぞ、空いてるよ」
自習グループで一緒なので、顔見知りだ。
この３人なら、安心出来る。

今日の実習は、水分量の実験だ。
100ｇの強力粉に水を60ｇ、65ｇ、70ｇと水の量を変えた生地を作る。
これを発酵させて、成型して焼き上げる。

その違いを、自分で確かめるという実習だった。
水分が、少ないと粉っぽくて、混ぜにくい。
多いと混ぜやすいが、ベタベタしてまとまりにくい。

発酵も時間の差が出て、成形は差がハッキリと判る。

焼き上げると、水分が少ないと焼色が濃く、多いと薄くなる。
食べると水分が少ないと堅めで食べごたえがある。
多いと柔らかく、モチモチしている。

同じ材料でシンプルに比較しても、これだけの差が出る。
パンの世界は、奥深い。