【完結】 悪女は今日もパンを焼く 【R18】

５

「起きて、始発の飛行機に乗るんでしょう」

智貴を起こす。
カーテンを開けると、朝日が射し込んできた。

「朝食はどうするの？」

「いらない。空港で食べる。
君の分は支払っておくから、ゆっくりと飯でも食って学校に行けばいい」

スーツを着込んだ智貴は、私を抱き締めてキスをした。

「昨日は、無理言ってごめんね。
正規の休みが取れる日を連絡するから」
そう言って、足早に出ていった。

私は、シャワーを浴びて体を起こす。
薄くメイクをして、学校に行く服に着替えた。

荷物を持ってフロントに行くと、実習着一式がクリーニングされていた。
バッグに詰めて、朝食ブッフェのチケットを受け取った。

納豆に焼き魚、野菜の御浸しにお味噌汁、ご飯という典型的な和食にする。
美味しいが、一人は寂しい。
さっきまで彼が居たっていう、遠距離恋愛の哀しさを知った。

学校まで歩いたが、１５分で着いた。
近くのホテルを選んでくれた、彼の心使いが嬉しい。
更衣室で実習着に着替えていると、麻未ちゃんが隣りに来た。

「お姉様、昨日は彼と一緒だったんですね」

「何で？」

「クリーニングの袋に、ホテルのロゴが在りますよ。
実習着をホテルのクリーニングに出すって、贅沢ですね」

「彼が出してくれた」

「素敵です。愛されてる」

「そうかな？」

「違うんですか？」

「起き上がれなくなるくらい、愛された」

「もう、お姉さまったら」
麻未ちゃんは恥ずかしそうな顔をして、笑った。