女難の男、アメリカを行く

第３章 Sophomore

６

「Amato、話を聞いて欲しいの」

プールサイドパーティーでずぶ濡れになった俺たちは、寮の部屋に帰って来た。
シャワーを浴びて、Aurelijaは俺のTシャツとハーフパンツを履いてる。
俺が煎れたコーヒーを受け取ると、話を始めた。

「エストニアに帰ったら、祖母が亡くなってたの。
私に心配かけないように、母と祖母が話し合って連絡してこなかった。
祖母から私宛の遺書を渡されて読んだけど、自分の幸せだけを考えるように書いてあった。
私はどうすればいいか、判らなくなったの」

「それは辛かったな」

「帰って１週間は、抜け殻になったわ。
でも仕事の約束があったから、ヘルシンキに行くのは決まってた。
私は気分転換に髪をブロンドにして、メイクも明るいものに代えてみた。
それが良かったのか、仕事は順調だったわ」

彼女の話に、俺は相槌を打つしかない。

「そんな中、私のパトロンになりたいってアメリカ人の客が現れた。
信用するに値する人物か、見分けるまで時間は掛かったけど、彼は急がないかったし、強制もしない。
最終的に私は受け入れることを決めて、エスコートガールの仕事を７月いっぱいで切り上げた。
一旦、エストニアに帰ってから母に相談したわ。
母は私のキャリアを邪魔したくない、自分の事は考える必要が無いと言い張った。
私は試しに彼が住んでるシカゴで２週間を過ごしてから、JUWに戻って来たわ。
これからは私は彼の所に通う事にした、Amatoと私は友達に戻るべきだと思うの」

Aurelijaは、もう決断している。
彼女の人生だ、俺は受け入れるしかない。

「俺たちは元の友人に戻ろう。
別に憎しみあってる訳じゃない、学友としてやっていけばいい」

「Amatoなら、判ってくれると思ってた」

「Aurelijaが納得してれば、俺が口出しする事じゃないよ」

俺たちは別れのハグをして、彼女を部屋まで送って行った。
自分の部屋に戻って冷静に考えると、彼女の話は出来過ぎている。
Aurelijaは舞美と知り合いだし、舞美がSt. Cloud Universityに留学したことも知っているはずだ。
俺が別れ話をしようとするのを察して、先手を取られたのか。
それともパトロンが見つかったことで、自分の身の回りを整理しようとしているのか。
本当の事は、彼女しか判らない。

俺には、彼女と付き合うことが無くなったという事実だけが残った。