女難の男、アメリカを行く

第３章 Sophomore

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「Brayden、日本市場はどうだった？」

「いや、厳しいですね。
世界中のCheeseメーカーがライバルでした」
Officeに出社した俺たちに、蓮央兄貴が尋ねている。

「アメリカじゃWisconsinのライバルは、CaliforniaかOhio、Vermontぐらいだろう」

「Leoさんが、外から市場を見た方が良いと言った意味が解りました」

「アメリカは、基本的に国内で自己完結してるからな。
今日は、二人で輸入食品のセレクトショップを運営している会社を訪問してくれ。
相手先のアポは取れている、向こうの要望やクレームまで聞き出してこい」

兄貴の指示に従って、俺たちは浜松町のOfficeビルを訪問した。
スーパー運営会社のバイヤーと面談する。
商談は通訳無しで、英語で行われた。

「生産者が日本にまで来て話を聞いてくれる、中々無い事です」

「私の家は、酪農をやっています。
うちの原乳を使ったCheeseが売られている現場を見に来ました。
お客様のニーズやクレームを商品の改善に役立てたいと思ってます」
Braydenは、堂々と答えていた。

「こちらの要望としては、サンプルで頂いたブルーチーズを生産して欲しい。
出来れば、量を確保したいところです」

「ブルーチーズは、冬季限定で生産します。
近所のワイナリーと提携して、フロンテナックというアメリカ原産種のブドウの葉を使い、Appleブランデーに漬けることになりました」

「いいですね、ローカルに拘こだわりがある商品は評価が高いです。
現場の声を聞くために、店舗を訪問されてはどうですか？」

「それは嬉しいです。ご紹介いただけますか？」
直ぐに連絡を頂き、恵比寿にある旗艦店に訪問することになった。
山手線で２０分の移動、ここは外国人が多い。
店舗に着くとバイヤーが連絡を入れてくれた為、店長さんがお出迎えだ。
さすがに恐縮する、乳製品の担当者も同席していた。

「この店は周りに外資系企業やIT企業が多いために、外国人客の利用が多い。
Cheeseの売り上げは、平均的な店の２倍になります」

「うちのCheeseはどうですか？」

「アメリカ人だけでなく、ヨーロッパのCheeseを食べ慣れたお客様にも好評ですよ」

「もっと売れる為に必要な事って、何かありますか？」

「アメリカらしさを追求することでしょうか。
小細工に走らない、大らかさをお客様は求めていると思います」
意見交換をして、売り場を見せてもらう。
日本のCheeseが30％、ヨーロッパが40％、アメリカ、オセアニアが15％ずつという棚割りだった。
うちのCheeseが取り扱いになる前は、アメリカは10%以下だったそうだ。
伸びしろは有る、そう思うしかなかった。