女難の男、アメリカを行く

第３章 Sophomore

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「Factoryから出荷したまま、売るわけじゃないんだ」

冷蔵倉庫会社の加工場を訪問したBraydenは、切り分けられて個包装されたCheeseを見て呟いた。
食品作業用のネット帽子を被りマスクをして手袋をした姿は滑稽だが、日本の衛生管理は厳しい。

「日本では、今日食べる分だけ買うという文化なんだ。
ホールサイズのCheeseを買うと持て余すし、小さければ２種類買って食べ比べも出来る」

「加工コストもバカにならないな」
冷蔵倉庫会社のスタッフとミーティング、先方の要望を聞いていく。
メモを取りながら改善点を探っていった。

「要望はFactoryに伝えます。
返事は当社が取りまとめて回答することで、宜しいですか？」

「間に入っていただけるのは、助かります」

「では、アメリカに戻る７月中旬には回答を出すようにします」
Factoryと加工場の間に俺たちの会社が入ることで、お互いの要望を言いやすくなる。
海外との取引では、必要な事だった。

品川にあるKashiragi Trading Incの事務所に戻り、兄貴と一緒に報告を兼ねてランチミーティング。
午後は、電車で六本木の輸入食品の店を訪ねた。

「この周辺は、外資系企業や大使館などが多い。
アメリカの商品を求める客には、評判が良いようだ」
販売個数が書き込まれた資料を見せながら、Braydenに説明していく。

「日本の売り場に、俺たちのCheeseが並んでいるのは感動だな」

「売れないと、あっという間に取り扱って貰えなくなるぞ」

「売れる商品を作らないとダメだな」
売り場を眺めながら、彼は考えを巡らしているようだった。
その後は、新宿のデパートを廻った。
地下の食料品売り場を見て回るだけで、日本の市場の厳しさを感じたようだ。

「世界中の食べ物や料理が並んでいる」
Braydenは、お弁当や総菜、パンやスイーツが並ぶ売り場に驚いていた。

「日本人は食べ物に対して、タブーが無いからな。
生ものから発酵食品まで、あらゆる食材を食べるんだ」

「アメリカのCheeseが１社しか取り扱いが無い」
チーズ売り場を覗いて、彼は不満そうだ。

「日本では、ヨーロッパがCheeseの本場だと考えられている。
ここに殴り込むには、最高の品質と圧倒的な個性が必要だ」

「日本市場は、甘くないな」

「ああ、世界一品質にはうるさいよ」

その後、電車を乗り替えて我が家まで帰る。
Braydenは初めて電車に乗ったようで、車内でずっと落ち着かない様子だ。
二子玉川のスーパーを覗いてから、帰宅した。