女難の男、アメリカを行く

第３章 Sophomore

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６月の前半は、蓮央兄貴のアシスタントとして働いた。
Bucolics Cheese FactoryのCheeseを取り扱っている店舗を廻って話を聴く、顧客リサーチがメインになっている。
アメリカンフードを愛する人たちにはWisconsinのCheeseは好評だが、一般的にはヨーロッパ産の方が最高級というイメージがあるようだ。
食べ比べれば品質は差が無く個性の違いなんだが、思い込みを変えるのは難しい。

「あまり一般人に売ることを考えるな。
下手にブームになったりすれば、大手商社が出てきて市場が荒れる」

「俺たちのCheeseが好きな人たちを大事にするってこと？」

「そういうことだ、一過性のブームなんかいらない」
現場で商品を売って来た、兄貴の言葉が重い。
Braydenが来日する６月後半に向けて、日本の市場についてもっと知る必要性を感じた。
兄貴に許可を貰って、都内のデパートを見て回ることにする。
何が売れているのか、人気があるのか、市場を調査するのも重要だ。

「平日の午後にデート出来るって、いいね」

「デートじゃない、市場調査だ」

「どっちでもいいの、海人と一緒にいることが楽しいんだから」
私服姿で、デパ地下を見て回る。
俺の腕を絡め取るように、舞美はくっついていた。
彼女の留学が決まってから、二人の間は英語で話している。

「ヨーロッパのCheeseも、結構安いのね」

「国内の酪農家を守る為に、高い関税を掛けてる。
もし自由化されたら、日本のCheese業者は全滅だろうな」
デパート４か所をまわった後、渋谷のアメリカンダイナ―で夕食をとる。
当然、チーズバーガーとビールを注文、舞美はシュリンプバーガーを頼んでいた。

「この値段でクオリティーの高さは驚異的だな。
アメリカ人が見たら、ビックリするよ」

「確かに。New Yorkに行った時、レストランの値段が高いのに驚いたもの」

「チーズバーガー、食べ応えがあるなあ」
歩き回ったのでビールが美味い、バーガーとの組み合わせは最高だ。
チーズバーガーは良く出来ていて、ちょっと旨すぎるだろう。
思い出してメニューを見回すが、チーズカードのフライが無い。
Wisconsinでは日本の唐揚げのように、一般的なメニューだ。
大学のパーティーなどでも必ず置いてある、それだけが残念だった。

舞美を家まで送ってから自宅に戻って、今日の調査結果をレポートに纏める。
Edward Ullman School of Businessの教授に見せることも考えて、英文で書いた。
直ぐに、Braydenにメールしておく。

彼から、６月２０日に来日すると連絡が入った。