女難の男、アメリカを行く

灰色 猫

文字の大きさ
上 下
97 / 170
第3章 Sophomore

Summer Vacation 1

しおりを挟む
地獄のFinal examination、ただし終われば天国(3カ月の夏休み)が待っている。
みんないい成績を取るのに、必死だ。
いい成績を取って奨学金を増額したい、有名大学に転校したい、欲を叶える為には頑張るしかない。

面食らったのは、最後の統計学だ。
Take-home examという形式のテストは、初めての経験だった。
朝9時にメールでレポート課題が送ってきて、提出期限は当日の午後3時。
この6時間、図書館で資料を探すのも良し、ネットで検索しまくるのもOKだ。
ただし、クラスメートとの相談はカンニングとみなされて許されない。
見つかれば即退学、留学生ビザは取り消される。
初めて日本語で検索してレポートを作って、その後に英訳するという手を使った。
何とか時間内に仕上げて送信、今のBestは尽くした。

****

「海人、お帰りなさい」
羽田に到着した俺とAurelijaは一緒に入国ゲートを出ると、母が迎えに来ていた。

「母さん、ただいま。Aurelijaを連れて来たよ」

「こんにちは、お世話になります」

「いらっしゃい、日本を楽しんでね」
母の車で自宅まで帰る途中で、彼女が俺に話しかける。

「どこまでもビルとお店が続いているのね」

「東京は、大きな街なんだ」
彼女は興味深そうに車外の景色を見続けていた。

家に着いて、Aurelijaに母がトイレの場所と使い方を教えていた。
一応、メーカーのHPからダウンロードした英語マニュアルを渡している。
それでもウォシュレットは、初めての彼女には説明が必要だろう。

「いきなりトイレの蓋が自動で開いたのは、驚いた。
日本のハイテクを見せつけられたわ」

「日本では当たり前の事が、世界では違ったりするからね.
俺もアメリカでは、色々と戸惑ったよ」

「Amatoがバスタブに入りたがる意味が判った。
素敵なバスルームが有ったわ」

彼女は、家を出た兄貴の部屋に泊まることになっている。
俺がキャリーケースを持って部屋に案内すると、まるでホテルのようだと喜んでくれた。


「海人、お帰りなさい。
今日は、彼方の好きなものばかり作ったわ。
アウレリアさん、嫌いな食べ物が有ったら遠慮なく言ってね」
母の言葉を、俺は通訳してあげていた。

ダイニングテーブルには、チキン南蛮、ポテトサラダ、出汁巻き卵などが並んでいた。
俺の誕生日は過ぎていたが、家族が祝うのは今日が初めてになる。

「海人、成人おめでとう。
大人になったんだから、責任を持って行動するように」
父が音頭を取って、ビールで乾杯した。

「このサラダ、とっても美味しいわ。作り方を教わりたいくらい」
彼女は、ポテトサラダが気に入ったようだ。

「リトアニアでは、じゃがいもは主食なの。
でもこんなに柔らかくて、美味しいサラダは食べたことが無いわ」

「後でレシピを書いておくね。海人、英訳してあげて」
母は美味しいと言われて、ご機嫌だった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~

八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」  ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。  蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。  これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。  一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...