女難の男、アメリカを行く

第２章 Freshman

１３

「こんなに素敵なドレス、本当に頂いていいの？」

蓮央兄貴から受け取った俺の荷物に、Aurelija宛のプレゼントが入っていた。
丁寧にラッピングされていたので、そのまま彼女に渡す。
プレゼントを着たから見に来て欲しいと連絡があったので、彼女の部屋を訪ねた。
箱にはドレスからブラウス、パニエ、ベレー帽まで一式が入っていたようだ。

「君に贈るって書いてあったから、貰っていいよ」
Aurelijaが着ていたのは、いわゆるロリータドレスだった。
モスグリーンのベルベットワンピースで、スタンドカラーや胸元、袖口、裾周りに贅沢なほどレースが使われている。
これを選んだのは、佐倉舞美に間違いない。

「すごくClassicなドレスね、Victorian Dollになった気分だわ」

「君をDollにしたい奴が選んだんだろう」

「きっと貴方の彼女ね」

「君に驚くほど似合ってる、煉瓦作りのOrlandHallで撮影したいよ」

リボンが付いたベレー帽を被ったAurelijaは、さすがにプロのモデルだった。

OrlandHallは、大学で一番古い建物だ。
赤煉瓦に縦型窓、尖った塔が特徴的なClassicデザインで、大学のランドマークになっている。
冬の弱い日差しの中をHallに向かって歩く彼女を、iPhoneで動画を撮影していく。
エントランスで彼女がポーズを変えながら動いてくれたので、画像もたくさん撮った。

「久しぶりにモデルらしい事をしたわ」

「素敵な画が撮れた、お礼に母に贈るよ」

「後で私にもちょうだい。私も母に送りたい」
話しながら帰っていると、すれ違う人から声がかけられる。

「素敵な服、美しいわ」

「ありがとう」
手を振りながら、歩いていた。

「Amato、どうしたの？」
Marikaと石田先輩だった。

「母がAurelijaに服を送ってきたから、撮影していた」

「これって、ロリータ服だよね」

「多分、Dollっぽくしたかったんじゃないかな」

「すごく似合ってる、フランス人形みたい」
立ち話をしていたら、アメリカ人の女たちが集まってきてスマホで撮っている。

みんなが近くにきて、ツーショットを頼んでいた。
Aurelijaも嫌な顔をしないで、撮影に応じている。
笑顔のまま、最後まで付き合っていた。

「初めて、アメリカの女の子たちと仲良く出来た。
Amatoのお母様が、ドレスを送ってくれたお陰だわ」

「君が楽しそうだった。それだけで、十分だよ」

部屋に戻って、動画を編集していく。
画像も整理して約束通り、Aurelijaに送った。
母と舞美にも、感謝のメールと添付ファイルを送った。