女難の男、アメリカを行く

灰色 猫

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第2章 Freshman

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Spring semester(春学期)も、授業のスケジュールは厳しい。
マスコミ専攻のAurelijaとビジネス専攻の俺は、ほとんど受けている講義が違う。
せめて昼休みくらい一緒に居たいのに、カフェテリアで話しているとSorority(白人女性の社交クラブ)の女たちに囲まれた。

「デート中に悪いけど、Amatoと話していい?」

「どうぞ」彼女が笑みを浮かべて答える。

「Arielに書を渡したでしょ、そのうちの一つをSororityのクラブハウスに飾りたいの。
新しく、Amatoに書いて欲しい」
このボス猿は、いつも厄介を持ち込んでくる。

「同じものでいいのか?」

「出来れば、2倍の大きさで書いて欲しい」

「簡単に言うな、練習が必要だから時間が欲しい」

「2月の交流イベントまでには、仕上げて欲しいんだ」
指定されたのが、Coco ココ Chanelシャネルの言葉だ。
【Beauty is a weapon of women, attire is wisdom, the humility is elegant.】
美しさは女性の「武器」であり、装いは「知恵」であり、謙虚さは「エレガント」である。
この厚かましさはChanelの言葉に反していると思うが、Sororityに貸しを作っておいて損はない。

「判った、間に合わせるよ。半切(35×136cm)2枚に書けばいいんだな」

「それで頼む」

「Amato、ありがとう」ValerieヴァレリーClariceクラリスからお礼を言われる。

「いつか俺が困った時には助けてくれ」
貸しを作ったことをアピールしておいた。

「Amatoの彼女って大変だね」

「何でだよ?」

「いつも周りに、女がやって来るもの」
Aurelijaが舞美と同じことを言った。

「日本でも同じことを言われたよ。でも、向こうから勝手に来るんだ」
俺のせいじゃない、心の中で思っていた。

「私だから良いけど、嫉妬深い彼女だと刺されちゃうよ」
本気なのか、からかってるのか、解らない答えが還ってきた。

放課後、Barbara Ann Cochran図書館でCalligraphyの専門書を閲覧した。
美しい文字が並ぶ中で、書道筆に合うものを探す。
Calligraphyは、基本的にPenで書くことが前提になっている。
元々の技法が違っているが、それでも美しいものは美しい。
イメージを頭に叩き込む、直ぐにArtGangのスタジオで書いてみた。

「今までと、作風が違うね」
先輩のChloeクロエから、声をかけられる。

「分かり易いように、Calligraphyを参考にしてみた」

「私は前の方が好き、これはAmatoらしくない」

「個性が消えてる?」

「これなら、普通のCalligraphyの方が良いよ」

指摘されて、判った。
俺が書くべきは、あくまでも書であってCalligraphyじゃない。
頭では理解出来たが、これを表現することは難しい。

また元に戻ってしまった。
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