女難の男、アメリカを行く

灰色　猫

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第２章　Freshman

４

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Spring semester（春学期）が始まった。
第１週はSyllabus授業進行表で、これからの授業の進め方を確認する。
さすがに前期ほどの戸惑いは無い。

統計学は思っていたより数学的な要素が多い、これは好感触だ。
逆に地質学は資料が多い、また大量の資料読みと纏め作業に追われそうだった。
英語は中級上のクラス、古典小説には普段は使わない表現が多い。
また、予習に追われそうだな。

「Amato、ありがとう。
中間ではBだったのが、共作したお陰でArtの成績がA－だったの」
Artの授業の前にArielアリエルから声を掛けられた。
どうやら、Alphabet書体を自分で考えた事が評価されたようだ。
ついでに、頼まれていたCoco Chanelの言葉５枚を渡した。

「君が苦労して、考えた成果だよ。君の書体で、５枚とも書いてみた。
今後は、俺なりに発展させていいかな？」

「Amatoの好きにすればいいよ。どうせ書いていくうちにTouchも変わるでしょう」

「Arielが、俺の書道に方向性を教えてくれたことは確かだ。
ありがとう、無茶な事を頼んでごめんな」

「いいのよ、それより書のお礼をしたいわ」

「気持ちだけで十分だよ、ありがとう」
彼女の好意をMinjuに指摘されていたので、危なかったが何とか切り抜ける。

部屋に戻ってレポートを確認していたら、Faruqが帰って来た。
俺を無神論者扱いしている奴に、宗教のレポートを見せてみる。

「Faruq、日本に帰った時に俺の宗教に関して祖父に教わって来た。
レポートに纏めたので、教授に出す前に読んで感想を聞かせてくれ」

「ああ、見せて見ろ」
俺が渡したレポートを読んで、Faruqの顔つきが変わった。
怒っているというより、困惑した顔だ。
一神教からしたら、八百万の神がいるなど異次元過ぎるはずだ。
開祖や教祖、教典も持たず、森羅万象あらゆるものに神が宿るという思想に基づく民族宗教など理解不能だろう。

「日本人は、仏教徒じゃないのか？」
統計上は、日本には仏教徒が8,000万人以上いることになっている。

「俺の先祖は、仏教の寺で供養されている。だから、俺は仏教徒なんだ」

「仏教徒なのに、他の神を信じるのか？」

「ああ、神仏混合は日本人にとって当たり前のことだからな」

「有り得ない」Faruqにとって、俺の宗教観は理解不能のようだ。

「俺がFaruqと上手くやって行けるのも、この宗教観のお陰だ。
俺は、君が信じる神を否定しない」

「それは、ありがたい。
確かにAmatoは、俺が初めて一緒に生活している異教徒だ」

レポートを返してもらい、次はAurelijaに読んでもらおう。
彼女の意見を聞いてから、教授に提出することにした。

※宗教に関するデリケートな問題を取り上げていますが、あくまで作者の個人的な考えに基づいて書いております。
いかなる宗教に対しても、攻撃や否定する意図は有りません。
ご容赦、下さい。

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