女難の男、アメリカを行く

灰色 猫

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第2章 Freshman

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「せっかく、Wisconsinまで来ました。
地元で愛されている食材、加工品を作っている企業は有りませんか?」

歓迎の夕食会で、蓮央兄貴が切り出した。
大手の商社が手を出さない小さな工房や無名の企業は、小回りが利く個人商社の独壇場だ。
逆に言えば、これが出来ないと生き残れない。

「Wisconsinは、気候が似ている北欧やドイツからの移民が多い。
だからビール、ソーセージ、チーズの生産が盛んなんだ」
Braydenの父親が説明してくれる、だから白人が多いんだな。
近郊の町にある工房をいくつか紹介してもらう事になり、明日以降に訪問する予定になった。

「Amato、こんな可愛い服をありがとう」
俺がプレゼントをしたワンピースを着て、Braydenの妹Marciaマーシャが歓喜している。
俺は舞美に頼んで、Marciaの服を選んで貰った。
日本から持って来たのは、こっちではあまり見ないタイプのワンピースだ。
彼女の瞳に合わせた淡いグリーンで、レトロなスタイルが可愛い。

「Amato、妹があんなに喜ぶのは珍しいよ」

「前に会った時、背伸びした服を着ていたのが気になった。
もっと可愛い服が似合うと思ったので、あのワンピースを選んだんだ」

****

翌日、兄と一緒にドイツ移民の子孫が経営しているソーセージ工房を目指す。
近いような話ぶりだったが、さすがはアメリカ。
85マイル(138km)のハイウェイも無い田舎道、2時間半のドライブだった。

「せっかく来て貰って悪いが、日本人の口に合うものなんか作ってないぞ」
気難しい職人のおっさんが俺達を牽制する。

「日本人の口に合うものは、日本の職人が作ってます。
俺は、アメリカ人が食べて喜ぶものを探しに来た」
兄貴も負けていない。

「ここから3マイルほど東に行った所に、Diner食堂がある。
そこのホットドッグは、うちがソーセージを卸してるんだ。
お前たちが食べてから、話を聞こう」

俺たちは昼食を兼ねて、味見に向かった。
地元の人しか通わないだろうという店だが、中々の賑わいだ。
シンプルなホットドッグとチリドッグを頼む、ナイフで半分に分けて食べてみた。

「なんてことないホットドッグだが、旨い」
兄貴は食べ物に煩い。中々、褒めないはずだが。

「パンが大したことないし、ソーセージも普通なのに」
俺も不思議だった。

「旨いパンに旨いソーセージを組み合わせても、ダメなんだ。
個性がぶつかりあって、旨さを消すことがある」
兄貴の言葉で、納得出来た。

「バランスが大事ってこと?」

「そういうことだ、普通の組み合わせでも旨く出来る。
ホットドッグはシンプルな料理だからな、ごまかせない」

俺と兄貴はソーセージ工房に戻り、サンプルとしてソーセージ、ハム、ベーコンを買い漁った。
店主に日本で買い手を探す約束をして、店を出た。

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