女難の男、アメリカを行く

第２章 Freshman

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「海人、今夜の夕食は何が食べたいの？」

出発まで毎日、俺のリクエストで夕食が決まっている。
家族みんなで鍋を囲みたくて、母に寄せ鍋を頼んだ。

「夕食までには、帰る」

家を出て、卒業した男子高を訪ねる。
元の担任から、留学を考えている１、２年生に話をしてくれと頼まれていた。
３学期始業式の後、視聴覚室で話をすることになった。
部屋に入ると、２０人くらいの男子が並んでいる。
担任が俺を紹介する、高校時代の成績を公開した事には怒りが湧いた。

『俺はAmato Kashiragi、justitiaユースティティア University WisconsinウィスコンシンのFreshman1年生だ。
西海岸や大都市の有名大学には、アジア人留学生がたくさんいる。
そういう環境を嫌って、JUW俺の大学を選んだ。
JUWの留学生は新入生2,500人のうち120人、アジア人は40人しかいない』

全部、英語で話した。
舐めた高校生には、一発かましておく。
iPadを使って、モニターに英語の講義で使ったPoetry詩からShort Storyを映し出す。

『このレベルの英語で、中級下のクラスだ。
これが週に３回ある、予習だけで毎回３時間はかかってる』

次に経済学のpdfファイルを見せる。

『このファイルが授業ごとに２０から３０ページ配布される。
これを読んでから、纏めて、自分の意見も用意しておく。
１２人のクラスだから、必ず当たる。
それも１回や２回じゃないぞ、Discussionに勝たないと評価されない。
この９０分の講義が週に２回。
予習に毎回４時間以上かかるから、日曜日は丸々潰れる事になる。
それでも、留学したいか？　日本の大学が楽だぞ』

圧倒されたのか、静かになる。
担任の司会で、質疑応答になった。

『Kashiragi先輩は、奨学金は貰ってますか？』

『学費の半分に当たる、Scholarship奨学金を貰っている。
家庭の収入に連動する奨学金もあるので、学費全額分を貰っている留学生もいるよ。
ただしGPA成績スコアを維持しないと、貰えなくなるから要注意だ』

『パーティーとか、無いんですか？』
いい質問だ、鞭ばかりじゃ可哀想なので飴も与えておく。

『これは、Halloweenの仮装パーティーだ』
Aurelijaと一緒の画像を見せてやる。
彼女のミニドレス姿に、どっと沸いて大騒ぎになった。

『彼女ですか？』

『さあ、どうだろう』
せっかくなので、大学が公開しているCampus Tourの映像を流す。
カフェテリアの料理でまた沸く、アイスアリーナが大学内にあることが驚きのようだ。
アメリカの大学受験のコツを最後に話して、質疑応答は終わった。

「督木、とっても良かったよ。最後まで英語で通すとは思わなかったが」

「あれぐらいは聞き取れないと、留学なんて無理です。
俺が高校時代に聞きたかった事を話しました。
留学を考える子が増えたら、嬉しいんですけど」

「彼女を見せるとは思わなかった、凄い美人だな」

いや、彼女は日本にいるんですけど。