女難の男、アメリカを行く

灰色 猫

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第2章 Freshman

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「海人、帰りは直行便のビジネスクラスに乗せてやる。
その代わり、12日の出発便だ」

長男の蓮央Leoが、俺と一緒にMinneapolisに行くと言っている。
渡米の目的はBucolics牧歌 Cheese Factory、Braydenブレイデン Nielsenニールセンの一族が経営している企業だ。

「俺が懇意しているフードサービスの社長に、海人がお土産で持ち帰ったチーズを試食させた。
相当に興味を示してくれたが、量が確保出来るか、安定供給は大丈夫か、経営状態や製造過程まで俺の眼で確認したい。
お前がガイドしろ、我が家にとって大事な話だ」

我が家は曾祖父の代から、輸入商社を経営している。
祖父が大手の商社が取り扱わない、海外の個人商店や中小企業の衣料やファッション製品を輸入して成長した。
親父の代になって、ワインやチーズなど食品の取り扱いを始めている。
今は、蓮央が先頭で海外を飛び回っていた。
兄貴が決定事項として、俺に話している。
親父も了解しているだろうから、これは逃げられない。

「判ったけど、1週間も早くなったから忙しくなった」

****

「帰るまで、毎日逢ってね」
突然の日程変更に、真美は不機嫌になった。

「舞美のスケジュールに合わせるよ」
俺が帰るまでの1週間、舞美と逢うのに手は抜かない。
今日は朝一の予約時間、行きつけの歯科でクリーニングとホワイトニングをして貰った。
アメリカは医療費がバカ高い、日本で治療が出来るものは終わらせておく。

舞美と待ち合わせて、渋谷の蕎麦屋へ行く。
アメリカに居る時に一番食べたかったのが麺類、中でも蕎麦は俺にとって特別だ。
鴨せいろを食べて、追加のそばも頼む。

「海人、良く食べるね」

「こんな蕎麦は、アメリカじゃ絶対食べられない。ラーメンより好きなんだ」

「日本食を持っていくの?」

「向こうで手に入るものが結構ある。インスタント味噌汁とカレー粉、鰹だしの素くらいしか持っていかない」

「海人、料理出来るんだね。
親子丼を作ってるのを見て、ビックリしたよ」

「アメリカに行く前、母に習ったんだ。カレー、丼物、パスタしか作れないけどね」

店を出て、渋谷の道玄坂に向かう。
歩いて行くのがさすがに恥ずかしいのか、舞美はマスクに眼鏡をしている。
netの評判が良かったホテルに入った。
平日サービスタイムなので、一番高いランクの部屋にする。

「評判が良いだけあって、キレイなお部屋だね」

「本当は、温泉にでも連れて行きたかったんだけど」

「仕方が無いよ、一緒に居られる時間が限られてるから」

ライトアップされているジェットバスに、二人で入る。
舞美を俺の前に入れて、後ろから抱いていた。

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