女難の男、アメリカを行く

灰色 猫

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第2章 Freshman

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1月3日、母と一緒に祖父の家まで挨拶に行った。

祖父は、俺の留学に対しての一番の応援者だ。
若い時から仕事で海外を飛び回っていて、アメリカの魅力も知り尽くしている。
俺が小さい時から外国の話を聴かせてくれて、留学のきっかけを作ってくれたと言ってもいい。

「海人、アメリカの大学はどうだ?」

「勉強は大変だけど、日本とは違う文化を楽しんでるよ」

「違う文化に触れて、改めて日本を見ると違うだろう?」

「表参道までライトアップを見に行って、日本の安全にビックリした。
アメリカに行かなければ、気がつかなかった」

「周囲の事に、気がつくようになったのは良いことだ」

祖父は仕事を引退してから、夫婦で神社、仏閣巡りをしている。
一昨年には、四国の弘法大師空海の霊場八十八箇所を車で走破して参拝している。
祖母も一緒なので流石に歩いたのは一部だが、それでも大変なことだ。

「アメリカの教授から、俺の宗教観を聞かれたんだ。
キリスト教徒とはまったく異質の宗教観を持っています、って逃げた。
どう答えれば良かったんだろう?」

「海人、学校ではまったく宗教について学んでないだろう。
親父も教えてないだろうし、突然聞かれても困るよな」

「本当だよ、ルームメイトのアラブ人からはお前は無神論者だって言われるし」

「ほう、ルームメイトはアラブ人か」

「ああ、ドバイから来た我が儘な金持ちだ」

「それは、海人ぐらいしかルームメイトは務まらんだろう」

そう言って、祖父は自分の考える宗教観について話してくれた。
伝統的宗教である神道において「八百万の神々」といって神が無限におられるといった思想が日本人に根強く残っていることから始まって、お寺で祖霊を祭る話には納得出来る。
俺がFaruqと上手くやっていける訳や、神社やお寺、大学のチャペルで自然に手を合わせても違和感を感じない理由が何となく判った。

話を聞いた後、仏壇に手を合わせて祈る。
祖母がお茶を淹れてくれて、大学で煎茶道を披露した事を話した。
iPhoneで、みんなとお茶会をした時の様子を見せる。

「海人が教えたとおりにやってる」

「教わった手順通りにやったよ、みんなお湯を移す手順が珍しい様子だった」

「帰る前にもう一度、ここに来て。
もう少し上の段階を教えてあげる、判った?」

「じゃあ、6日後に来ます」
俺に祖母に逆らう気持ちは無かった。

戻って直ぐに祖父から聞いた話を纏めていく、さすがに日本語じゃないと書けない。
骨子の段階で10項目になる、要点を絞ってレポート10枚に程度に抑えたい。
この日は、夜までずっとPCの前にいた。

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