女難の男、アメリカを行く

第２章 Freshman

７

「何で、こんな美人を掴つかまえるかな。モテるにしても程度があるよね」

iPhoneに写ってるAurelijaを見ながら、舞美がぼやいた。
チェスターコート姿の俺の隣に、黒のフェイクファーコートの彼女が立っている。
ハイヒールなので俺とあまり変わらない、スタイル抜群だ。

「私が海人の為に選んだ服の隣に並ぶってどういうこと？」

「美術部のChristmas Partyだったんだ、オシャレした方がいいかなって思った」

「二人でChristmasを過ごしたのね」

「ああ、一緒だったよ」
その後も尋問は続き、iPhoneに写っている人物の説明をさせられた。

「アメリカ人って、芋姉ちゃんばかりだよね。何で、こんな女たちと仲良しなのよ？」

ValerieヴァレリーとClariceクラリス、ArielアリエルのSororityメンバー、ArtGangのChloeクロエは大学の中でも目を引く女性たちだ。
真美は、俺と一緒に写ってるのが気になっている。

「特に、この石田先輩は手を出しちゃダメよ」
みんなで親子丼を作った時の動画を見ながら、舞美が俺に注意する。

「手を出したりしないよ」

「誘惑されても、応じちゃダメ」

「石田先輩、茉莉花、Cynthia、Minjuには絶対に気をつける」

「それならいいわ、この４人は遊びじゃ済まないから」

真美には、俺には見えない何かが感じられるようだ。
１月４日にデートする約束をして、やっと解放された。

１月２日、朝から書道教室に向かった。
去年の４月まで通っていたので８カ月ぶりだが、遠い過去のような感覚だ。
アメリカ生活が自分の感覚を狂わせてる。
小学生から大人まで３０人くらいだが、顔見知りがたくさんいた。

「督木君、アメリカの生活には慣れた？」
先生のアシスタントをしている、年配の師範から声を掛けられる。

「勉強が大変ですが、時間を作って書いてます。
今は、書くことが楽しくなりました」

「良いことだわ、アメリカ人にも判る書を目指してね」
彼女には、俺がAlphabet書道を始める時によく相談していた。
少しずつ形になってると、励ましてくれる。

書き初めは、【 雲 外 蒼 天 】を選んだ。
｢雲の外には、青空が広がっている｣という意味から転じて、｢困難を努力して乗り越えた先には、明るい未来がある｣という意味になる。
飛行機でアメリカと日本を往復している俺には、ピッタリだと選んでみた。


【 Don't lose faith 】
「信念を失うな」 Appleの創業者、Steve Jobsが残した言葉だ。
行書体の様に書いてみた。

「いいね。君の成長を感じるよ。
可愛い子には旅をさせろ、って言う通りだな」

師匠から褒めて頂いて、新年から自信がついた。