女難の男、アメリカを行く

第２章 Freshman

３

「家で新年を迎えたら、ヘルシンキで働いてから帰ってくる」

Aurelijaが帰国した後の話をした。
ヘルシンキで働くという事は、エスコートガール風俗嬢をするんだろう。
フィンランドでは、売春が公式に認められているから捕まったりしないそうだ。
彼女の人生だ、俺が口出しする事では無い。

「私の奨学金は学費免除だけど、寮費や生活費は必要なの。
一応、貯金はあるけど将来が不安なんだ」

そう言われたら、何も言えない。
アメリカでも、大学生のパパ活が話題になっている。
専用のマッチングアプリの利用が増えており、事件も起きていて社会問題化していた。

「俺はAurelijaが無事に帰ってくれば、それでいいよ」

「詳しく話せないけど、個人営業の女の子よりは安全だと言いきれるよ」
彼女が今までに話した事を総合的に考えると、モデルクラブが斡旋組織なんだろう。

「私に失望した？」

「いや、自分が如何いかに恵まれているか、思い知らされたよ」

「Christmasの間はAmatoだけよ、一緒にいてね」
彼女の通告には、反論の余地は無かった。

＊＊＊＊

Artで共作したArielアリエルから、書いて欲しい言葉の原稿が送られて来た。
Coco ココ　Chanelシャネルが残した言葉を選んでいる。
さすがに、女性の心を揺るがすような名言が並んでいた。

【Great loves too must be endured.】
偉大な愛も耐えなければならない。

【As long as you know men are like children, you know everything.】
男を子どものようなものだと心得ている限り、あなたはあらゆることに精通していることになる。

【The best color in the whole world is the one that looks good on you.】
全世界で最高の色というのは、あなたに似合う色だ。

【A girl should be two things: classy and fabulous.】
女は洗練さと素晴らしさの二つのものを持つべきである。

【Beauty is a weapon of women, attire is wisdom, the humility is elegant.】
美しさは女性の「武器」であり、装いは「知恵」であり、謙虚さは「エレガント」である。

「Aurelija、この中でどれが好き？」
俺は、原稿を見せた。

「どれも素敵だけど、Amatoが書いてくれるなら私だけの１枚がいい」
彼女は地頭が良い、俺の質問を素直には答えない。

「じゃあ、特別な一枚を君に贈るよ」

「愛の言葉は、いらないよ」

彼女の返事は、俺たちの関係を表していた。

俺とAurelijaは甘いChristmasを過ごして、彼女は帰国する為にMinneapolisに向かった。