女難の男、アメリカを行く

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第２章　Freshman

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１１月に入って２度目のAcademic Adviserと面接した。
Spring semester（春学期）の履修計画を確認してもらう為に、自分の希望を説明する。

「英語、数学、地質学、統計学、Artを登録したいと考えています」

「前回説明した中から選んでるから、問題ない。このまま登録しよう」
今月早めに面談して、選択肢を聞いていた。
地質学は秋に一度登録して、春に変更したので決定していた。
Additional Requirements（専門科目の前に取っておくべき科目）の統計学か、会計学の選択になったが、試験のスケジュールを考えて統計学を選択する。
登録初日、オンタイムで登録したので無事に春学期から履修出来る事になった。

今週のArtの時間は制作ではなく、みんなが提出した作品の品評会だった。
作品のテーマや狙いを皆の前で説明する。
その後、みんなの批評や質問を受けて回答していく。
俺の番が来た。
５枚の書をホワイトボードに留めて、説明を始めた。

「秋には月が澄み渡る夜空に輝く、という中国の詩を漢字で書きあげた。
篆書から楷書まで、歴史が古い順番に並べている。
篆書は紀元前200年前の書体で、楷書は紀元600年頃に完成した書体です。
アメリカ人にはどれが一番好まれるのか知りたいので、教えてください」
建国250年の国で、紀元前200年の書体を見せるのは楽しい。
アジアの奥深さを見せつける。

「どうして紀元前200年だと判るんだ？」
後ろの学生から質問がきた。

「石窟や石碑に彫られたり、青銅器に刻まれた文字から判別されている」

「Amatoが好きなのは、どれ？」

「みんなの好みを聞いてから、発表するよ」
作品ごとに挙手をしてもらうと、篆書が３人、隷書は５人、草書が３人で、行書が８人。
楷書は何と１人だけだった。

「俺もみんなと一緒で、行書が一番書きやすい。
隷書は今回書いてみて、好きなことを再確認した。
ただ、俺が大学で研究しているのがこれです」

【 Beaver Moon 】動きを抑えて、楷書のように書いた作品を出した。
ホワイトボードの端に貼り付けて、一緒に並べてみる。
さすがに、みんなも一目見ただけで理解出来たようだ。

「１１月を表す、ネイティブアメリカンの満月を書にした。
このAlphabet書道を極めたいと思ってる」

授業が終わって帰る準備をしていると、女性二人に話しかけられた。
たしかValerie、Clariceと同じSororityのメンバーのはずだ。

「Amato、彼方のAlphabet Calligraphyは素晴らしいと思う」
下心丸見えのお世辞が面映ゆい。

「褒めてくれて、ありがとう」

「それで、頼みがあるの」
ほら、きた。

「何？」

「これを書いて欲しい」
そう言うと、iPhoneの画面を俺に見せた。

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