女難の男、アメリカを行く

第２章 Freshman

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今週は、Artの提出期限だった。
Office hourに教授を訪ねて、作品を見せる。
【 秋月揚明暉 】中国の詩人、陶淵明による四時詩しいじしの一節を５枚の書にした。
秋には月が澄み渡る夜空に輝く、と今の季節を詠うたっている。

楷書、行書、草書、隷書、篆書てんしょと５つの書体で、半紙に書き分けた。
一応、説明の為に書いたレポートを渡す。
教授がどこかに電話をした後、歴史が古い物から作品を並べて見比べている。
１０分くらいで、中国系と思われる人物が入って来た。
俺の作品を見て教授に何か言っている。

「君は中国人か？」いきなり聞かれた。

「いや、日本人です」

「素晴らしく、美しく書けている。
２０人の中国留学生や中国系アメリカ人の学生でも、これ以上の作品は書けないだろう」

「中国の古典があるから、手本に出来るんです。
素晴らしい文化だと思いますよ」
そつない返事で、かわしておく。

その後は、３人で漢詩の話で盛り上がる。
歴史学者のChen先生が四時詩の全文を読み上げて、Artの教授に聞かせていた。
俺も聞きながら、四時詩の全編を書きたくなる。
条幅作品を書き上げたら、Chen先生にプレゼントするかな。


金曜日の経済学が終わったら、部屋に直行した。
Walmartで買った仮装セットを開けると、安っぽいマントと小物が入っている。
自前の黒いパンツを履き、白いシャツを着る。
髪をムースで固めて後ろに流す、革靴を履いたら準備は出来た。

Aurelijaを迎えに行くと、黒のゴシック調ミニドレスを着ていた。
170cmの彼女だから似合うドレスだが、目立つことこの上ない。

「Amatoのドラキュラに合わせてみた。どう？」

「パーティーより、ベッドに誘いたいほど魅力的だ」

「それはパーティー後のお愉しみだよ」
俺もここでマントを羽織り、ドラキュラの犬歯をつけた。

「似合ってる。Amatoはスタイルがいいから、マントも様になるよ」

二人でOdin学生会館に向かう。
Aurelijaが腕を組みたいというので、右側に立って肘を貸した。
密着したが、誰に見られようとお構い無しだ。
会場の入口でIDカードを見せて、５ドル払う。
中に入ると食べ放題のフードが並んでいる、ドリンクだけ受け取った。

「最近は、いつもAurelijaと一緒ね」
MinjuがJackieと一緒に来ていた、横縞の囚人服が可愛い。

「彼女以外に誘われなかった」

「普通、男が誘うもんでしょ」

「Jackieは誘ってくれたんだ」
反撃すると、まんざらでもないという顔をした。

Sorority（女性社交クラブ）のValerieヴァレリーとClariceクラリスが血染めのナース服集団にいる。
Aurelijaと一緒にいるところを捕まった。

「二人、仲良くしてるようね」

「心配かけたが、疑いは晴れただろ」

「あんたは目立つんだから、気をつけなさい」
俺が目立ってるという事が理解出来ない。

「Sororityの皆さんには、お騒がせしました。
お陰で仲良く成れました、ありがとうございます」

Aurelijaが俺に代わって返事をした。