女難の男、アメリカを行く

第２章 Freshman

１５

１０月も終わりに近づくと、大学内ではあちらこちらでHalloweenの飾りつけを見るようになった。
特に寮では、みんながドアにいろんな飾りつけで楽しんでいる。
そんな中、俺たちの部屋は【 収 穫 祭 】の書が異彩を放っていた。

ArtGangでは、Halloweenに関する作品の募集が行われた。
初めてなので、【 Happy Halloween 】と半切りサイズ（３５×１３６cm）の書を出してみる。
Alphabetを行書のようにメリハリをつけて、流れるように書いたものだ。
楽しい気持ちを表現してみたが、アメリカ人にはどう見えてるだろう。

「Amato、作品は希望者にプレゼントすることになるけどOK？」

「貰ってくれるなら嬉しいよ」
マネージャーに返事をして、作品を預けた。

学生寮で勝手にパーティーをしないように、Odin学生会館の会議室が解放されることになった。
実行委員が責任を持って、HalloweenPartyを開催することになっている。
俺はAurelijaと参加することにした。

「仮装、何にしようかなあ」
Aurelijaは初めから、する気満々だ。

「やっぱり仮装しなきゃダメなのかな？」

「Halloweenの仮装なんて、大学生ならでは楽しみでしょ。
何でも一度は経験すべきよ」
彼女から煽られて、確かにそうだと思えてきた。

「じゃあ、君の仮装に合わせるよ、何がいい？」

「Amatoは黒のスーツを着て、ドラキュラ伯爵がいい。
私はお姫様」
何かとんでもないことになりそうだ。

Odin学生会館のギャラリーに、Halloweenの展示を見に行く。
DestinationとArtGangのArtクラブ、それに写真部のジョイント展示だった。
Halloweenだから楽しい作品が多いのかと思いきや、本格的なものが並んでいる。
アメリカらしいと思ったのは、デジタルアートが多い。
カラフルで斬新な作品が展示されていた。
自分の作品の前に立つ。
大きすぎる額に入っている書は、他の作品とはアスペクト比縦横比が違うので余計に大きく感じる。
半切り紙に墨書きだから、周りとはあまりに違っていた。

「Amato、希望者が殺到しているぞ」
マネージャーからPC画面を見せられると、IDナンバーが並んでいた。

「誰にあげるの？」

「Amatoが選んでいいよ」

「マネージャーが決めて下さい、ただ感想は聞いて欲しいです」

「任せておけ、ちゃんと聞いておくよ」

Alphabetは受け入れられていると、自信が湧いてくる。
同時に本格的な漢字の書を出したらどんな反応があるか、気になってきた。
次は、漢詩の古典でも書いてみようかな。