女難の男、アメリカを行く

第２章 Freshman

１２

「Amato、何処にも行かないのか？」

「スタジオで落ち着いて、書を書きたいんだ。
日曜日は予習もしないといけないし、遠出はしないよ」

Faruqに聞かれたが、やりたいことが有ったので予定は組まなかった。
ArtGangのスタジオに置く机と椅子を、SDGSセンターで見つけている。
机に椅子を乗せて一気に抱えて運ぶ、２０分かけてスタジオに持ち込んだ。

椅子の高さを合わせて、姿勢よく書けるように調整した。
さっそく何枚か、書いてみる。
【 Happy Halloween 】【 Trick or Treat 】【 万 聖 節 】【 収 穫 祭 】
時期を考えて、楽しい作品を書いてみた。
Alphabetは半紙に二段書き、漢字は行書で縦書きにしている。
Faruqに配慮して、【 収 穫 祭 】をポスターフレームに入れて部屋のドアに飾った。

金曜日の朝から、FaruqがMilwaukeeの親戚に会いに行った。
行く前に、土曜日の夜に帰ってくるからと俺に念押しをして行く。
どうやら、女性を部屋に招待していいよという彼なりの配慮らしい。

「Aurelija、夜に俺の部屋に遊びに来ない？」

「Faruqは？」

「土曜日の夜に帰ってくると言って、Milwaukeeに行ってる」

「じゃあ、行こうかな」

「俺が夕食を作るよ、soy sauce醤油は、大丈夫？」

「問題無いよ、Amatoの料理って興味あるわ」
直ぐにアプリでキッチンルームを予約する。
寮には半分も学生がいないので、簡単に予約が取れた。

夕方まで時間があるので、Bowman Athletic Centerでトレーニングをする。
今は、背筋と肩の筋肉を中心にバランスよく鍛えるメニューをこなしていた。
東京の自宅には、俺の専用ロードバイクがある。
日帰りで江の島まで往復したこともあるくらい、自転車は好きだ。
ジムのフィットネスバイクを３０分間、漕ぎ続けた。

ジムからの帰り道、自転車で大学の外に出てガソリンスタンド併設の食品スーパーに立ち寄る。
無事に、ほうれん草が手に入ったので寮に帰った。

「ドアに掛けてある作品で、Amatoの部屋って判ったわ。
何という意味なの？」
午後６時になり、Aurelijaが俺の部屋を訪ねて来た。

「収穫のお祭りって書いてある。ハロウィンの事だけど、Faruqに配慮して収穫と書いた」
そう言って、昨日の夜に書いた作品を見せた。

「素敵だわ、言葉によってタッチを変えているのね」

「Alphabetは、まだ自分の形が出来てない。モノマネの領域だよ」

「それでも、十分に人を楽しませる作品だと思うよ」

褒めてもらうと嬉しくなるし、やる気も出る。
やっぱり、人との交流は大事だ。