女難の男、アメリカを行く

第２章 Freshman

６

日曜日、書き上げた書を持ってNicoll を訪ねる。
事前にメッセージを入れていたので、部屋の中まで招かれた。

「Amato、今日までずっと待ってたわ」

「ずいぶん待たせたな。
約束していた書が出来上がったから、受け取ってくれ」
【尼可 戈麦斯】半切りサイズ（３５×１３６cm）楷書で縦書きに名前を書き上げたものと、【 Nicoll Gomez 】半紙（B4サイズ）に筆記体で書き上げたものを渡す。

「素晴らしい、宝物だわ。本当にありがとう。
ポスターフレームに入れて、ここに飾るね」
彼女は壁を指さした。
ルームメイトや遊びに来ていた連中まで一緒になって、大騒ぎになった。

「これは、俺の母がNicollの為に用意したものだ。
一緒に受け取って欲しい」
桐の箱を開けると、水色に金魚が泳ぐ京扇子だった。

「凄く美しい、本当にありがとう。とっても嬉しいわ」

「母がアルゼンチンのユニフォームから、水色の扇子を選んだんだ。
俺が話した、君のイメージらしい」

「そこまで考えてくれたんだ。素敵なお母さまね、会いたかった」

「そのうち、また遊びに来ると思うよ」

「必ず紹介してね、お礼を言いたいから」

母親に必ず紹介することを約束して、彼女の部屋を出た。

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午後、Book StoreでMacBook Proを買った。
俺は大型モニターも欲しかったのでMacBook Airでいいと思っていたが、オタクの二人が許してくれない。
JackieとFaruqがついて来て、あれこれと俺に指図する。
結局、MacBook Proは14インチモデルにして、大型モニターは２年落ちの中古品Dellの４K32インチを70％Offで手に入れた。
キーボードはFaruqが、マウスはJackieが、手持ちの中古をタダでくれるみたい。
部屋に運ぶと、二人が直ぐにセッティングしてくれた。
FaruqがくれたのはLogicoolのワイヤレスキーボード、気前良すぎるだろ。
マウスは使ったことが無いトラックボール式を、Jackieがくれた。
彼には、どうしても合わなかったらしい。

さっそく作業をしてみると、超快適だ。
iPadだけで全てやっていた、この２週間があほらしくなるほど。
３２インチモニターだと２画面にしてPDFファイルを読みながらnet検索をしたり、レポートを書くことが出来る。
キーボードは、タッチが気持ち良く、全然疲れない。
トラックボールマウスは慣れが必要だけど、ゲームをする訳じゃない。
タッチパッドより正確に動くので問題は無い。

経済学の予習をしてみると、効率が段違いだ。
今まで４時間は掛かっていたのが、３時間で終わった。