女難の男、アメリカを行く

灰色 猫

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第1章 Start

15

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7月に入って、大学の中が騒がしくなった。
サマースクールが始まり、短期集中で単位を取得する学生で賑わっている。
カフェテリアも営業を再開して、いつでも食事が出来るようになった。

Academic Englishのクラスは、実際に大学で行われている講義と同様に進められている。
グループ毎に与えられたテーマで討論して、結果をレポートで提出する毎日だ。
授業は午前中で終わるが、レポート作成と予習で午後の時間が潰れていく。
テーマの予習で、資料を何ページも読むことにも慣れた。
討論を想定して、自分の考えを発表出来るようにしておく。
講義中に発言しない事は許されない。
俺は、いつの間にか日本語で考えることが無くなっていた。

「Amato、卒業式の後にパーティーがあるよね?」

「聞いてるけど、何?」

「ウェルカムパーティーは、Cynthiaをエスコートしたんでしょ」

「ああ、まだ二人しか知り合いがいなかったからな」

「Cynthiaは、Amatoがエスコートしてくれるか心配してるの」

「4週間も先の事だろ。全然、考えてなかった」

「誘われるかどうかは、女の子にとって一大事なんだよ」

「Marikaは、どうなんだ?もう誘われたのか」

「私のことは、いいの」
Marikaが話したことは、厄介な問題だ。
誰を誘おうと俺の自由だという気持ちと、Cynthiaの好意を無視出来ない。
俺は、自分が誰を誘いたいのかということを自問する。
問題を先送りすることは辞めて、週末までに自分なりの結論を出した。

「俺が卒業パーティーに、君をエスコートすることは任せてくれ。
でも友達以上には考えられない。それでもいいのか?」
月曜日、朝一番にCynthiaを見つけて話しかけた。

「Amato、好きな女子は、いないの?」

「仲間以上の好意がある子は、いない。
大学に入ってから、本当の出会いがあるかも知れないだろ。
無理に留学生の中から選ぶ必要なんか、無いんだ」

「じゃあ、エスコートはお願いするね」

「Cynthiaを誘おうと思ってる奴が、いるかもしれないぞ?」

「本気なら、早く言ってくるべきだわ」

午前中の講義が終わって、Aurelijaを捉まえた。
カフェに誘って、話をする。

「卒業パーティーにはCynthiaと行く。
悪いけど、ファーストデートは出来なくなった」

「彼女が好きなの?」

「いや、友達以上には考えられない」

「私は?」

「いい友達じゃダメか」

「今はそれでいいよ」

何とか舞い込んだ面倒は、さっさと片付けることが出来た。

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