女難の男、アメリカを行く

第１章 Start

４

「俺はAmato、日本から来た。
大都会で生まれ育ったので、都市の魅力も悪い誘惑も知っている。
全く違う環境を経験したくて、JUWを選んだ」

「性格は几帳面、清潔好きで、論理的な思考を好む。
趣味はサイクリング、特技は書道カリグラフィーで五段です。
留学するって決めてから、アルファベット書道も練習してました。
作品を見せましょう」

そう言って、ホルダーから半切りサイズ（３５×１３６cm）の書を出した。
【威斯康星】 【Stay hungry, Stay foolish】　
漢字は、縦書きで丁寧に楷書で書いてある。
アルファベットは横書きで、力強く筆記体で書き上げた。

「漢字でWisconsinウィスコンシンを書いたものと、Appleの創業者 Steve Jobs氏の名言です。
ここで過ごす期間で、自在に英語が使えるようになりたい。
みんな、よろしく」

昨日から考えてきたスピーチを披露した。
直ぐに女子学生から質問が飛んできたが、早口過ぎて聴き取れない。
巻き舌のうえに独特の訛なまりがあるので、内容が入ってこなかった。

「彼女は、自分の名前を作品のように書いて欲しいと言ってるけど」
俺が戸惑っていると、見かねて講師が通訳してくれた。

「大学に入ってから活動するつもりで、書道具を大学用の荷物に入れてるんです。
入学したら書き上げて、プレゼントしますよ」

「やった、ありがとう」質問した彼女は喜んでいた。
他の質問にも何とか答えたが、内心はショックだった。

全員のスピーチを一通り聞いたが、基本的にみんな早口だ。
その上、みんな何某なにがしかの訛なまりがある。
話している事の半分くらいしか聞き取れないので、内容を理解することが出来ない。
この連中と討論やプレゼンテーションでやり合うなんて、気が遠くなるほどだ。

スピーチを聞きながらメモ取りしてみたら、アジア系が７人、アフリカが４人、中南米が７人、ヨーロッパから３人の合計２１人だ。
アジア人は俺とJackie、韓国と中国人の女性が一人づつ、インドの男性が二人にカタールから女性が一人だった。

俺に質問した女性は南米アルゼンチンから来ていたので、スペイン語訛りだった。
中南米から来た７人はみんな早口で、訛りがきつくて聞き取りにくい。
受け取る側が慣れないと難しいようだ。

「Jackie、みんなのスピーチを理解することが出来たか？」

「ヨーロッパとアジア系は何とか聞き取れたが、中南米とアフリカ人は無理だった」

「俺もだ、あんな早口は無理だって」
二人で愚痴ってたら、女性３人組から話しかけられた。