女難の男、アメリカを行く

６

俺と佐倉舞美の出会いは、幼稚園だった。

有名私立大学の系列幼稚園は、東京のお坊ちゃま、お嬢様が集まっていた。
入園前に事前教育を受けるのが当然の世界だったのに、俺は何の準備も無く幼稚園に放り込まれた。
躾けの行き届いた子供の中に、野生児の俺が入園出来たのが今でも判らない。
周りから孤立して押し黙った３歳児を庇かばってくれたのが、佐倉舞美だった。
そのまま一緒に付属小学校に進んで、６年間一緒だった。

自我に目覚めた俺は、親の反対を押し切って中高一貫の進学系男子校に転校した。
中学時代には親の交友関係で年に数回会う程度になり、だんだん疎遠になって行く。
１年以上会わない時間が過ぎて、いきなり舞美から連絡が着たのは高校２年になってからだった。

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「舞美、久しぶり。元気にしてた？」
渋谷のMOS BERGERで待っていた彼女に、俺は声をかけた。

「私を忘れてなかった事は、褒めてあげる。
１年半も会わないうちに、ひと回り大きくなったのね」

「もう、舞美の後ろに隠れてた俺じゃないよ」

「安心した、海人に頼みがあるの」

「舞美には、ガキの頃の借りがある。
俺に出来ることなら、聞いてやるよ」

「５月になったら、私１８歳になるの。
seventeenのうちに初体験するって決めてたんだ。
海人に相手をして欲しい」

一瞬、言ってる意味が理解出来なかった。
冷静に頭を巡らせて、徐々にとんでもない話だと判ってくる。

「何でseventeenのうちにする必要がある？
その相手が俺っていうのも判らない」

「seventeenで海人とするのが私の夢なの」
全然、答えになってない。

「海人は経験あるんでしょ？」
俺は返事に困って、押し黙った。

「否定しないって事はあるのね、良かった。
初めて同士だったら、大変なんだって」

どこで仕入れた話なんだよって、ツッコミたかった。

「俺はイヤだ」

「私の事が嫌い？」

「そうじゃなくて、相手をしたくない」

「そうじゃないって事は、嫌いじゃないのね。
First Kissの相手と初体験するって、素敵じゃない？」

どうやら彼女の中では、完全にストーリーが出来上がっていた。
俺は只の相手にしか過ぎない。

「考えさせてくれ」
卑怯だが、頭を冷やす時間が欲しかった。

「考えるって言うのは、Noじゃないってことね」
彼女に最後まで主導権を握られたままだった。