（完結） 転生して１６歳から人生やり直し

初めて泣かれてみた

「人に抱かれて、初めて泣いたわ」

今まで誰に抱かれても、すやすや眠っていたようだ。
俺が心の中で話しかけたのが、いけなかったのか。

「今の時期は、泣くしか出来ないの。
泣かれたことは、悪い事じゃないのよ」
母が言った。

陽菜なりの自己主張だと思えば、嬉しい。
座敷からキッチンに戻ったら、母が俺に尋ねた。

「プレゼント、結構したんじゃないの？」

「キャベツの収穫に行った分が吹っ飛んだ。
でも、いいんだ。姉ちゃんは俺の恩人だから」

「この１年。光希が成長していくのが、嬉しいわ」

「母さんが喜んでくれてるなら、俺も嬉しい」
これで光希との約束は、全部果たした。

火曜日の放課後、普段とは違う高揚感に学校が包まれた。
明日からGWで３連休、その後土日なので５連休になる。

書道部に行くと、美乃里が話しかけてくる。

「GW、何処か行くの？」

「秘密」

「何で？」

「言わなくてもわかるでしょ」

美乃里は一瞬考えて、赤くなった。

「俺は何も、言って無いよ」