上 下
318 / 322
最終章

13

しおりを挟む
4日間の予定で、スコットランドのエジンバラにやって来た。
ここをベースにゴルフの聖地、St Andrewsセントアンドルーズを訪問する。
さらにタータンの製織せいしょく工場を見学して、サンプルを何点か購入する予定になっていた。

佐藤氏が同行して、レンタカーで市内をガイドしてくれる。
エジンバラ城を観光した後、ホーリールード宮殿の敷地内にあるカフェに案内された。
エリザベス女王が夏を過ごした宮殿のカフェは、普段は一般に開放されている。
店内から外のテラスにも席が見えて、初夏になれば素晴らしい時間が過ごせるだろう。

「軽井沢のホテルに、素敵なカフェを作りたいよ」
聖苑には、理想のカフェがイメージ出来ているようだ。

「聖苑が作ったら、solemnityで貸し切ってガーデンパーティをしたいね」

「直ぐに仕事の事を考える、蒼海の悪いとこだわ」

「言い出したのは君だろ」

「私は、自分が楽しめる場所が欲しかっただけよ。
お金儲けは二の次なの」

「君が楽しめる場所は、みんなが行きたがる場所になる。
結局、ビジネスは成功するんだ」

俺達のやり取りを佐藤氏が何も言わずに見ていた。

……

翌日、朝から佐藤氏が推薦するタータンの製織工場を訪ねた。
コンピューター制御の機織はたおり機ではなく、昔ながらの機械でタータンの柄を織っている。
恐ろしく手間と時間が掛るはずだが、全て職人技でこなしていた。
もの凄い機織り騒音の中、織り上がった生地を見せてもらう。
風合いと色調の奥深さが、普段目にする物とは圧倒的に違っていた。

デザインルーム案内されて話を聞くと、タータンの柄は全て登記が必要だという。
ここでは客の注文に合わせて、新しいデザインを起こす。
それを織り上げて、タータン登記所に届け出までしてくれるそうだ。
solemnity専用のタータン柄をデザインして織り上げて登記する、これは最高に魅力的な話だった。

サンプルとして生地を買い付けて、solemnityに発送して貰う。
今後のビジネスを発展させる、パートナーを確保することが出来た。

「伊王さんが来る前に、本社から調査の指示が来てたんです。
訪問先を5社ほど回って、一番製品が良かった工場にお連れしました」

「ありがとうございます。
ここに来れただけでも、出張してきた甲斐がありました」


※日本ではタータンチェックと呼びますが、現地ではtartan (タータン)と呼ぶのでそちらを採用しています。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

結婚しましたが、妹に悩まされています

恋愛 / 完結 24h.ポイント:426pt お気に入り:219

セックスの価値

恋愛 / 完結 24h.ポイント:71pt お気に入り:104

【※R-18】イケメンとBL♡したいだけ

BL / 連載中 24h.ポイント:35pt お気に入り:198

気になるなぁ日記3

エッセイ・ノンフィクション / 連載中 24h.ポイント:235pt お気に入り:0

ニューハーフ極道ZERO

BL / 連載中 24h.ポイント:711pt お気に入り:31

竜頭

歴史・時代 / 連載中 24h.ポイント:63pt お気に入り:17

入れ替わられた女

大衆娯楽 / 連載中 24h.ポイント:113pt お気に入り:0

[R18] 異世界は突然に……

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:213pt お気に入り:2,453

妹がいなくなった

恋愛 / 完結 24h.ポイント:646pt お気に入り:2,117

処理中です...