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最終章

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4月に入って、一ノ瀬流通グループから仕事が次々と舞い込む。
来週には英国出張を控えているのに、打ち合わせが続く。

本部の人たちとはほとんど繋がりが無いので、頼りは一ノ瀬聖苑だ。
最初の打ち合わせ相手が、ホテル事業を合弁しているスペキアーリスグループだった。

「solemnityのウェディングドレスを、当社のホテルの結婚式場で使いたい。
出来れば、当社で独占したいが如何でしょう?」
確かにショーの後に、貸衣装で使えませんかとお客様から問い合わせが有っていた。

「1種類で、大丈夫ですか?
幾つかのデザインが必要でしょうか?」

「まずは、今回のショーで発表されたものが人気になるでしょう。
何せ、真凛の為のデザインで話題になっています。
後はシーズンごとに新作を出して頂けたら、嬉しいですね」
加山社長や花鳥デザイナーとも相談が必要なので、この件は継続審議となった。

次は、不動産部とvivacitasの単独出店について、会議をする。
フィーデスのvivacitas担当高橋マネージャー、営業担当役員と俺、聖苑が出席した。

「地方都市の中心部は、空洞化が進んでいる。
ファッションビルが苦戦してるんだ、何とか出店出来ないか?」

「ただ出店するだけでは、最初だけですぐに苦戦すると思います」

「何故だ?」

「vivacitasの服を買って、何処に行きます?
郊外の大型モールなら、食事も選べるし、映画も見ることが出来る。
ボーリング場やカラオケルームもある。
車で集まってデートする、仲間と遊ぶことが楽しめるんです。
街のファッションビルで買う理由がありません」

「何か、いい方法はないか?
都市部の再開発事業は、これからを不動産部も注目してるんだ」

「私が手掛けている例をあげましょう。
今、ドレスを着てティータイムを楽しむサロンを、百貨店と一緒に計画しています。
ドレスを売る為ではなく、着て楽しむことを売り物にしているんです」

「新しい体験を売る施設か」

「それを考えるのは、不動産部の仕事でしょう。
ただ大都市の一等地なら、遊ぶところはたくさんあります。
そこにvivacitasの専門店を作ることは、フィーデスさんも検討するんじゃないですか」

「今後フィーデスは大都市郊外のモールに出す店は、ファミリー向けのライフウェアを中心にして行きます。
大都市の繁華街にvivacitasのアンテナショップを置きたい」
営業担当役員も、チャンスを逃したりはしない。

大都会でも出店して貰えるのは、不動産部にとってはそれなりの成果だ。
細部を詰める話し合いを続けることに決まった。

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