蒼い海 ~女装男子の冒険~

灰色 猫

文字の大きさ
上 下
310 / 323
最終章

しおりを挟む
春のsolemnity meetingの実施プランを纏め上げて、実施チームに渡す。

俺の要求を叶えるのは、ファッションプランナーの仕事だ。
勿論、会議で質問も受けるし、現場でアドバイスもする。
だが現場の責任者は、あくまでプランナーで全てを任せていた。

今回から、田北 由布たきた ゆう女史が指揮を取る。
彼女はデザイナーを挫折してたが、持ち前のセンスで裏方として頑張っていた。
加山社長が見出した逸材で、俺がプロデューサーになった時を同じくしてプランナー助手に抜擢されている。
言わば、同期と言える存在だ。
田北女史を鍛え、育てるのも、俺に与えられたミッションになっていた。

……

3月中旬の日曜日、大学の卒業式が行われる。
朝から月奈が俺たちのマンションに来て、聖苑のメイクを仕上げていた。

「プライベートだから、わざわざ来なくていいのに」

「私と彼をロンドンに連れて行く為に、お世話になりました。
個人の意志で来てるんですから、気にしないで下さい」

「いやいや、日曜日の朝8時から来てくれたら恐縮するよ」
楽しそうに、聖苑と月奈が言い合っていた。

俺と一ノ瀬聖苑は、お揃いのsolemnity Britishのスーツを着て行く。
聖苑はフレアスカートで、ネクタイの代わりにスカーフを巻いていた。
俺はボタンダウンシャツに、スクールカラーである青に黄色のストライプタイを月奈が結んでくれる。
solemnityのスタイリストが俺達の為に選んだ、卒業式用のアレンジだ。

「素敵、理想のカップルが出来上がった」

「月奈ちゃん、ありがとう。ちょっと真凛の気分が味わえた」
聖苑は、メイクからスーツ、小物まで自分の為に用意して貰った事に感動していた。
solemnityを買うほどのお嬢様だから、言えば今までにでも出来ただろう。
だが節度を持って無理を言わないのも、彼女らしかった。

二人で、一ノ瀬家の送迎を断った。
一緒に歩いて行くのも最後だ、色々なことが思い出される。

「いつもながら仲がいいな。流石に二人共、スーツが似合ってる」
一年の時から仲間の渡辺 雅紀わたなべ まさきたちが、俺たちを待っていた。

「渡辺たちも、スーツの着こなしが出来てる。
みんな、就活で鍛えられたんだな」

「ああ、真凛みたいに簡単には社長には会えなかったけどな」
いつものように、俺がTVで会社訪問をしていた事を弄ってくる。
このメンバーのお陰で大学にいる間は、学生でいられた。

「雅紀たちには感謝してるよ、ずっと仲間でいてくれてありがとう」

「俺たちも楽しかった、みんなに自慢出来たしな」

俺たちのやり取りを、伊王と一ノ瀬の両親が見守っている。
一ノ瀬社長も今日だけは、只の父親の顔になっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...