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最終章

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JLWが閉会した夜、新宿のホテルで打ち上げパーティーが行われた。

「今回からvivacitasチーフデザイナーを任された山下冴子女史には、特段の謝意を贈りたい。
花鳥デザイナーの抜擢に、良く応えている。
見事にsolemnityとの差別化と、商品としての完成度という課題を克服してくれた。
ありがとう、見事だった」
フィーデスの松本社長の挨拶で、出席者全員が拍手している。
花鳥デザイナーと一緒に並んでいた山下チーフは、明るい表情でみんなに答えていた。

「では、お疲れ様。乾杯!」
solemnityの加山社長が乾杯の音頭を取って、パーティーが始まった。
俺はten strikeの足利プロデューサーをつかまえて、今後の話をする。

「秋冬のJLWと、来春のJLWまで、ten strikeと契約したい。
そちらが望めば、メンバー全員を出演させる契約でもいい。どうでしょう?」

「伊王さんには、真凛の時代にcloud nine《クラウド ナイン》を抜擢して頂きました。
そしてten strikeもまた、伊王さんのお世話になりました。
私個人としては、是非こちらからお願いしたいぐらいです。
ただten strikeのマネージメント会社との調整も必要なので、即答は控えさせて下さい」

「利害関係の調整が必要なことは、十分に理解出来ます。
詳しい話はこちらから申し入れをしますので、次の機会にしましょう」

「ありがたいお話ですので、前向きに検討させて頂きます。」
足利プロデューサーと、いい関係を築いていたのが良かったようだ。
やっぱりビジネスは、信用と信頼関係だ。

プロデューサーになって、挨拶回りが増えていく。
多くの人と会って、関係を築いて行くことも仕事のうちだ。
vivacitasの高橋マネージャーと話していると、一ノ瀬グループの不動産部門責任者から声を掛けられた。

「フィーデスの直営店舗とは別に、地方都市のファッションビルにvivacitas専門店を誘致出来ないか?
今日のショーを見て、核テナントになる可能性が見えた」

また厄介な仕事が増えた。
だが一ノ瀬流通グループの不動産部門は、社全体の利益のうち3割を稼ぎ出している。
無下には断れない。

「今、フィーデスの直営店舗を全国に拡げる準備中です。
それも不動産部門と協業ですよね?」
一応、牽制しておく。

「地方は郊外のモールが絶好調なんだが、中心部の空洞化が問題なんだ。
若者が集まるテナントが欲しい」

これは一筋縄では行かない予感がした。

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