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最終章

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「田中さん、一ノ瀬花蓮のマネージメントは事前に準備してたの?」

俺は、ガーデンズオフィスを訪ねて話を聞いた。
田中社長が企画を纏めあげて、一ノ瀬グループから任されるまでのスピードに驚いたからだ。
何の準備も無く、出来るはずがない。
俺がプロデュースをしていく為の、ヒントが有ると見ていた。

「はっきりと準備をしてた訳じゃない、ただイメージはあった」

「イメージ?」

「三島悠花は、東京オリンピックの1年前からナショナルチームにいた。
その時の話を聞いていたから、イメージが出来上がっていたんだ。
ほぼ角川プロが要求している事と同じだったからな」

「メダルを取ること以外、全てナショナルチームがやっていた?」

「そういうことだ。
そこまでやっても銅メダルだ、相手だって同じことをやってるから」

「花蓮は、今まで遅れてたんだね」

「それでもプロデビューから5年で、トーナメントを3勝している。
才能は間違いなく本物だ。
後は、俺たちが日本タイトルを取る為の環境を作っていくだけだ」
田中社長は、新しい仕事に意欲的だった。
その後も話をすると、今回の事に意欲的な意図が見えてくる。

「今の世の中は、本物を求めている。
大リーガーやバスケットボール、フットボール、ゴルフなどのスーパースターが大金を稼ぐのがいい例だ。
人々は体験を求めてるんだ、連日満員のテーマパークを見れば判るだろう。
ガーデンズオフィスも芸能界だけ、モデルの世界だけでは、必ず行き詰る。
AIモデルがCMに出ている時代だ、ECサイトの撮影が全てコンピューターの中だけで行われる事だって夢じゃない」
俺に語る田中社長は、遠い未来を見ていた。

この話は、俺にも大事なヒントになった。
プロデューサーの仕事は、みんなに進む方向を示すことだ。
今年のロンドン行きは遊びじゃない、課題をたくさん与えられた気がした。


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