蒼い海 ~女装男子の冒険~

灰色 猫

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第十七章 決断

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「聖苑、イギリス行きに月奈も連れて行きたいんだけど。
俺達が働き詰めだったように、月奈もほとんど一緒に働いてた。
自分達だけ、旅行に行けないよ」

俺が提案すると、聖苑が考えて返事をした。

「私も賛成よ、ただ一つだけ問題が有る」

「何か、有るの?」

「彼氏が了解してくれるかな?」

「月奈に彼がいるってホント? 誰?」
知らなかった。
俺が真凛だった時に、相棒といえるくらい一緒だった。
どれだけ助けられたか判らないほどだ、余計に男の正体が気になる。

「怒っちゃダメだよ、彼って山田君なの」

山田君といえば、ガーデンズオフィスのマネージャーだ。
一ノ瀬グループでくすぶっていたが、公募で田中社長に見出された。
ラガーマンあがりで馬力がある、その上一本気な性格で忍耐強い。
俺も人間性を高く買っていた。

「山田君は公私のけじめがつかないって、最初は月奈のアタックを断っていた。
自分から田中社長に相談する程、月奈の方がベタ惚れなの」

これは、月奈に確認するしかない。
俺が聞くと遠慮するかもしれないので、聖苑から話してもらうことにした。

……

「月奈ちゃん、私たちと一緒にロンドンに行かない?」
ガーデンズオフィスの事務所で、聖苑が月奈を誘った。

「お金の心配はしなくていいよ、休んでいい許可も出るはずだから」

「ありがとうございます、少し考えさせてください」

「いいよ、2月中に決めてくれればいいから」
本人は、どう見ても行きたいっていう表情だった。

ただ自分だけでは決められない、そんな感じだ。
何とかしてあげたくなる。

数日後、田中社長同席の元で山田君と話した。

「月奈をロンドンに連れて行きたいの」

「私も行って欲しいと言ってます。
ただ、月奈さんがせっかく行くなら、私と一緒に行きたいって言い張ってるんです」

ここまで月奈が惚れてるなら、話は簡単だ。

「月奈をどうするつもり?」

「将来、結婚するつもりです」

「田中社長、山田君が2週間出張しても大丈夫?」

「何とかします」

「じゃあ、決まり。
山田さん、私達と一緒にロンドンに出張して下さいね」

聖苑は、即断即決の女だ。
最良の結果のためには、手間も費用も惜しまない。
手段は強引だが、最終的にみんなが納得する結果になった。


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