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第十七章 決断

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1月5日、solemnityの仕事始めだ。

新宿のsolemnity本店では、初売りが行われた。
専属モデルの北宮芽亜里が特別店長を務めて、お客様を迎える。
並んでくれたお客様に、お年玉としてノベルティのエコバッグを配っていた。

午後に、経営会議が行われた。
加山社長が挨拶をして、今年の経営方針が伝えられた。
その後にスケジュールを確認する。
新年最初の山場は、3月第1週のJapan Ladys Fashion Weekと3月第4週のsolemnity meetingだ。
vivacitasの春夏コレクションと、solemnityの春夏コレクションを並行して準備しなければならない。
タイトなスケジュールだから、慎重な運営が求められる。
そんな中、ゴルフウェアの提案を出してみた。

「一ノ瀬グループ所属のプロゴルファー、出利葉花蓮がゴルフウェアを作って欲しいと言っている。
自分なりに調べてみたが、Britishと親和性が高い。
ただマーケットの大きさや新規参入の是非を調べたい。
一ノ瀬グループの調査部に市場調査を頼みたいが、皆さんに検討をお願いしたい」

「未来に対する知見だと思えば、調査をする価値はある。
企業が成長する為には、止まることは許されない」
加山社長が、俺を支持してくれた。

「私から提案がある」
会議ではほとんど発言しない花鳥デザイナーが珍しく口を開く。

「蒼海君は、一度イギリスに行って見ないか。
今回の提案を考えれば、スコットランドまで足を延ばすのもいい。
solemnityの本質は、英国の伝統的なスタイルだ。
私が30年前にロンドンに行って学んでいるうちに、自分のスタイルを決めた。
街の空気や文化に触れることで、得るものは大きい。
プロデューサーとして成長する為にも、若いうちに行くべきだ」

花鳥デザイナーの熱弁に、みんなは納得した表情だった。

「蒼海君と聖苑さんは、真凛の時代から休みなく働いてきた。
大学の卒業に合わせて、卒業旅行ならいいだろう」
加山社長も賛同して、勧めてくる。

「solemnity meetingが終われば、プロデューサーも余裕が出来るだろう。
4月になればヨーロッパも温かくなる。季節的にも最高だ」
田坂営業本部長の話は、賛成だがスケジュールだけは守ってねということだろう。

「聖苑さんと話して、返事をします」
俺は、一旦話を保留した。


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